かつての結婚の形はある意味、シンプルでした。結婚したら女性は会社を辞めて出産し、子育てに専念する。男性は一家の大黒柱となる。この生き方以外を考える必要がなかったので迷うこともありませんでした。現代は多様な生き方があり、選択肢が増えたため、ボンヤリしたイメージのまま婚活をするとお相手との価値観にズレが生じてしまい苦戦します。
30代後半の女性・彩花さん(仮名)は、外資系企業に勤めていて年収は1500万円以上あります。年功序列の概念がない外資系ですから、「部下は年上の男性ばかりです」と言っていました。婚活を始めた当初は「自分と同じくらいか、それ以上の年収の男性がいい。そうでないとバランスが悪い」と言い、私が「あなたが望む結婚生活にそこまで年収は重要ですか?」と再考を促しても、年収1000万円以上の男性にこだわっていました。そうなるとお相手は40代男性が中心となります。
40代後半の男性・太一さん(仮名)とお見合いしたときのことです。太一さんの年収は彩花さんよりもわずかに少ないくらい。自分よりも稼ぐ年下女性を目の当たりにして、太一さんはプライドが刺激されたのでしょう。ちょっとしたことで彩花さんと張り合ってばかりいました。
たとえば、彩花さんがスマホで何かを検索すると、「こっちのサイトのほうがいいのに知らないの?」「これは俺の方が詳しい」と上から目線のアドバイスをして得意げな顔をする。一事が万事そんな調子で衝突することもしばしば。それでも彩花さんは「結婚のためだから」と我慢していました。しかし、彼のご両親に挨拶に行った際、ご両親も太一さん本人も亭主関白な発言を繰り返したため、我慢の限界となり破談になりました。
そこで彩花さんは悟りました。「いくら高収入でも古い価値観が残っている男性とはうまくいかないのではないか。年収よりも今の感覚を持っている男性を探したほうがいいのではないか」と。彩花さんは条件をガラリと変え、6歳年下の年収500万円の30代前半男性とお見合いをし、なんと1カ月で成婚退会しました。
彼は偉そうなことを言わず、彩花さんを尊重してくれます。デートは最初からワリカン。時間や場所は彩花さんが決めて、彩花さんがエスコートしました。もう男性のエスコートを待っている時代ではありません。エスコートができる女性が結婚できる時代です。
地域格差が大きい! 実家にはびこる古い価値観
「男性が上」という時代ではないからといって、女性を上に考えてほしいというわけではありません。性別も年齢も関係なく、能力や人格を認めるということです。婚活でも、お互いに尊敬し合っているカップルがうまくいきます。
「親の世代の古い価値観が残っている」と冒頭で説明しましたが、それは地方に行くと顕著になります。現代的な感覚を持ちながら婚活している人でも、地方の実家に戻ると価値観がリセットされてしまう。
11月に公開された映画『佐藤さんと佐藤さん』のトークイベントに登壇しましたが、この作品はまさにそういった現代の複雑な状況を描いています。大学で出会ったカップルで、彼は司法試験に挑みますが不合格が続きます。一方で彼女はすんなり合格してしまう。そんななか、子どもができ、彼女が弁護士として働き、彼が子育てをする。彼は実家に帰ると、長男ということもあり、「家族で自分の実家に移り住もう」と言い出すなど彼女との間に溝ができてしまいます。
日本は小さな国とはいえ、さまざまな地域があります。我々結婚相談所のアドバイザーもそうした地域の差や事情を細かく知ったうえでアドバイスしなければ、と痛感した2025年でした。
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