世界経済の大潮流 経済学の常識をくつがえす資本主義の大転換 水野和夫著 ~行き詰まる国民国家求められる経済共同体

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それでも資本家たちは儲けたい。だから国家を利用する。バブルを中途半端に弾けさせずに、国家に救済してもらわねばならない水準にまで膨らませる。あるいは、資源価格高騰の下で、徹底的な賃金カットでもって収益を確保する。資本家たちは利潤率の低下に直面して暴走し始めた、というのが本書の時代診断だ。

日本の超低金利と並行して、この十数年間にアメリカは、世界の金融資産増加分の約4割をかき集め、金融工学の発達によって経済を活性化してきた。だがリーマンショック以降、外国の資本は逃避し、ドル基軸通貨の時代は終焉を迎えている。

資本は今後分散して、世界的な超低金利の下で新興諸国の経済が成熟するまでの約20年間、グローバル化傾向が続くだろう。日本社会では現在、大企業と中小企業のあいだの賃金格差が広がっているが、この格差を是正するためには、なによりも中小企業のグローバル化が課題であると著者は考える。

下からのグローバル化を促すためには「東アジア共同体」の構想が必要で、国民国家の枠組みで考える発想は行き詰まる。超低金利時代を覚悟しつつも、国家を超える経済共同体の取り組みが求められている、というのが著者の見立てだ。

みずの・かずお
埼玉大学大学院経済科学研究科客員教授。1953生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。同大学大学院経済学研究科修士課程修了。八千代証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)入社。金融市場調査部長、執行役員、理事チーフエコノミストなど歴任。

太田出版 1680円 232ページ

  

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