【マイクロソフト誕生前夜】20歳のビル・ゲイツ「大学か、未来か」運命を決めた夜の決断
ポールと別居するようになり、“デストラップ”モンザを使えなくなったので、僕は自分の車を買った。1971年式のポルシェ911だ。中古車とはいえ大きな出費だったが、ずっとポルシェがほしかったし、6気筒エンジンの荒々しい音が大好きだった。ただ、それを買ったのを認めるのはいまでも少し照れくさい。
息抜きはポルシェを走らせること
ポルシェを走らせることが僕の息抜きになった。会社の問題をじっくり考えながら、制限速度を大幅に超えてサンディア山脈の道を走りまわる。クリスもしばしば同乗する。
その前の年に、僕らはよく整備された道路を見つけていた。山脈のなかを抜けてくねくねとあがっていき、セメント工場へつづく道だ。ポルシェを買ったあと、僕らは「セメント工場通り」と呼ぶこの道をよく高速でドライブした。
ある夜遅くに工場で車をとめると、イグニションにキーがささったままのブルドーザーを2台見つけた。セメント工場通りのつきあたりで、クリスと僕は巨大ブルドーザーの運転を練習して何夜か過ごした。
夜にクリスと車で走りまわり、映画を観て、ポールやマイクロソフトのメンバーとつるむ。仕事のほかにアルバカーキですることといえば、せいぜいそれぐらいだった。グループで唯一の夫婦、スティーブ・ウッドとマーラ・ウッドが家庭生活の雰囲気をふんだんに提供してくれ、よく食事に招いてくれた。
ポールの家へ足を運び、プロジェクションテレビで番組を見ることもあった。僕らは『ザ・パリサーズ』に夢中になった。アントニー・トロロープの政界小説群をBBCが映像化した作品だ。仕事後に集まってソファやカーペットに腰を落ち着け、合計22時間にわたるビクトリア女王時代イングランドの公爵や公爵夫人たち、三角関係、金銭トラブルの世界に完全にのめり込む。
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