「心理的安全性」の意味をはき違えている【ぬるま湯のような職場】が陥りがちな"典型的な悪循環"

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従業員エンゲージメントも、ワーク・エンゲージメントと同様に個人差が仮定されていて、個人に働きかけることで高めることができると考えられています。この要因にはより組織的な施策に焦点が当てられているようです。

ワーク・エンゲージメントの提唱者であるシャウフェリらも、2023年の最新の論文で、エンゲージメントを獲得するポジティブな循環を回すことで従業員のパフォーマンスやウェルビーイングが向上する点や、エンゲージメントの階層構造を指摘しています。

2つの先行要因の共通点としては、上司・同僚からのサポートや良好な組織文化、価値観の一致が重要な影響を及ぼすことです。

逆に異なる点は、ワーク・エンゲージメントが仕事そのものや作業設計に依存し、短期的な動機づけが影響することに対し、従業員エンゲージメントは、組織からのサポートや待遇、長期的な組織との関係性の影響が大きい点にあります。

「心理的安全性」の本来の意味とは

心理的安全性(Psychological Safety)という用語は、組織心理学や組織行動論において議論されてきた言葉です。初めて語られたのは、組織心理学者のエドガー・H・シャインの文献であるとされています。

近年の注目の背景は、ハーバード・ビジネス・スクール教授のエイミー・エドモンドソンが、「チームにおける心理的安全性」に注目した研究を行っていたことと、Google社の社内調査「プロジェクト アリストテレス」により、生産性向上に寄与する大きな要素として挙げられたことにあります。

エドモンドソンは、医療チームのパフォーマンスについて研究するなかで、パフォーマンスが高いチームのほうが、ミスの報告が多いことに気づきます。

なぜミスが多いのにパフォーマンスが高いのでしょうか。そう、「ミスがきちんと報告されている」という現象が関係していることに思い至ったのです。

ここからエドモンドソンは、「失敗や対立するアイデアの提出など、チーム内でリスクのある行動をとっても否定されない安心感が共有されている状態」のことを、チームの心理的安全性が高い状態であると定義しました。

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