「やる意味ある?」との声も…劇場版『チェンソーマン』が大ヒット・藤本タツキ『ルックバック』が実写映画化、是枝監督でも不安が募る事情

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2つ目は、劇場アニメで「もうやり切ったのでは?」と感じてしまうことだ。

原作の魅力をきっちりアニメーションに落とし込んだ劇場アニメで、「できることをやり切ったのではないか?」と感じている人も多い。

「このまま展開の幕を下ろせば有終の美を飾れるのに、今さら実写で何を表現するつもりなんだろう」

「劇場アニメと何が違うんだろう」

という疑問の声があるのだ。確かに、劇場アニメはあまりに完成度が高く、原作ファンも納得のクオリティであるため「ここで終わったほうがいいのでは」と思う気持ちもわかる。アイドルが人気絶頂のタイミングで引退するのと同じように、最も美しい状態で『ルックバック』という作品を記憶に残しておきたいのだろう。

3つ目は、「原作の良さを実写で表現しきれるのか」という不安だ。

『ルックバック』はまるで実写映画を観ているかのようなコマ割りやカットが魅力の作品である。一般的なマンガでは「◯年後〜」と文字で表現するような時間経過を、同じカットの服装と四季折々の背景で表現するなど、良質な映画を観た後のような充足感を与えてくれる。

だからこそ「マンガならではの“実写っぽさ”が魅力なのに、実写映画で“実写っぽさ”を表現するのは難しいのでは?」という懸念があるのだろう。確かに、マンガやアニメで見ると魅力的に見えた表現でも、実写映画に持ち込むと途端に冷めてしまうということもありそうだ。

もちろん、是枝監督ならきれいに落とし込んでくれるだろうとは思うのだが、「『ルックバック』ならではの良さが削がれてしまうのでは?」と心配する気持ちも理解できる。

実写化に「期待したい」という声も大きい

不安な声がある一方で『ルックバック』という作品自体が実写映画向きの「現実と地続きな世界線の物語」だからこそ、実写化に期待したいという声も大きい。

ネタバレになるのであまり詳しく言えないが、本作は読了後にとてもザラザラした心境に至る作品だ。きっと、公開当初に読んで以来、心に刺さったトゲが抜けないままの人も多いだろう。

だからこそ、「誰も知らない」や「そして父になる」などの映画を制作してきた是枝監督なら任せられるという安心感がある。単なるハッピーエンドの映画ではなく、「どんなにままならなくても、これからも日常は続いていく」という作品を撮ってきた是枝監督なら、決して原作を蔑ろにすることはないはず……そんなふうに思える。

もちろん、是枝監督ならではの解釈や実写映画だからこその表現は盛り込まれるのだろう。もしかしたら、それは原作にはない要素かもしれない。それでも、実写映画化のニュースと共に公開された2点のティザービジュアルを見る限り、「この信頼が裏切られることはない」と思って大丈夫ではないだろうか。

現実世界で撮影するからこそ、四季の移り変わりと共に歩む藤野と京本の人生をよりリアルに描けるはずだ。こうした、実写映画ならではの表現で作られる『ルックバック』の映画に期待したい。

押入れの人 Webライター・マンガ編集者

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おしいれのひと / Oshiire no hito

児童指導員、メーカーのEC担当バックオフィス、Webマーケティング会社のディレクターなどを経てフリーランスのライター・編集者に。累計100万円以上ドラえもんグッズに使った自称ドラえもんガチ勢。

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