「ある心情」が非合理な投資の判断を生む…一方、決して市場を去らずに利益を積み上げるお金持ちが判断のよりどころにしていることとは

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ところが数カ月後に、売った株の相場が上がっているのを見かけると「売らなきゃよかった。失敗した」と思えてくる。ただ、もう一度買う勇気は出ない。そんなときにまわりで、投資で大損をした人の話を聞くと、心のなかで「やっぱりね。投資なんてやるもんじゃないんだ」とつぶやく。こうやって、市場を完全に去ってしまうのだ。

でもお金持ちは、損をしても絶対に市場を去らない。資産を見直して、もう一度チャンスが来るのをじっと待つ。だから、彼らは結局利益を手に入れるのだ。投資でお金を稼ぎたいのなら、なにがあっても市場を離れてはいけない。

「損だけはしたくない」という心理

気長に待てばいいものを、なぜ焦って株を売ってしまうのだろうか。要するに人間は、手に入れたものの価値よりも失ったものの価値を大きく評価する傾向があるからだ。

行動経済学によれば、それは「同じ価格でも利益よりも損失への回避心理が大きく作用するため」だという。人間は、1000円を手に入れた喜びよりも、1000円を失った悲しみをより強く感じるということだ。

原始時代の人々は、動物を狩り、植物の実を採って生活していた。常に危険な動物はいないか、毒のある植物ではないかを警戒しながら暮らしていたのだ。

油断して危険にさらされた人は、自分の遺伝子を後世に残せず亡くなってしまった。だから、スイスの作家ロルフ・ドベリは、「生き残った人々は、みんな慎重な人だった。そして、わたしたちはその子孫なのだ」と記している。

そのため、数千年たった今でも、わたしたちはポジティブな出来事よりも、ネガティブな出来事により強く反応する。利益が出なくてもいいから、損だけはしたくないと考えるのだ。

ここでクイズを1つ。先月の出費が多くて、カードの支払いのために次のうちどちらかを売らなければならないとき、あなたならどちらを売るだろうか?

A 買いつけ価格よりも5万4000円相場が上がった半導体企業の株
B 買いつけ価格よりも3万7000円相場が下がったバイオ企業の株
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