ベネトン、プラダ、フェラーリ…≪残業なし、家族最優先≫で独創性と最高品質を生み出すイタリア人!日本の会社とは大違いの働き方に驚愕!

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ファミリー経営特有の自由さと柔軟さで安定した経営を続けている企業も多い。イタリア北部の小都市フィデンツァにある出版社マッティオーリ1885は、名前のとおり1885年に設立され、今年創業140年を迎えた老舗企業だ。20年ほど前にこの会社を買い取ったファミリーは、医師の兄、建築家の弟と彼らの母の3人で共同経営しており、社員20人のなかには彼らの一族がたくさんいる。文字どおりのファミリー経営である。管理職はいないし、仕事の分担もはっきり決められていないが、なんとなく受け持ちが決まっている感じだという。

社員には成果をあげている限り自由にさせているところや、みんなが自由に意見を言い合うところなど、やはり自営業者の集団というイメージだ。

日本企業は家族主義の原点に返れ!

イタリアの中小企業を取材して感じるのは、多くの社員が経営者目線で仕事をしていることだ。まさに自営型社員である。彼らは自ら知恵を絞り、新しい価値を生み出すことに挑戦する。それを支えているのは一人ひとりが自立した個人として尊重される環境だ。

イタリア人は家族や親族との関係を大切にし、家族のイベントがあれば最優先で休暇を取る。また昼休みは2時間近くと長く、基本的に残業はしない。それでいて労働生産性は日本より高い。

そして職場では、フラットな関係のなかでみんなが自己主張し、自由に発言できる。もちろんフラットな組織や民主的な経営者ばかりではない。なかには経営者が絶対的な権限で支配する封建的な企業もあるが、それでも社員は立場の違いを超えて自分の都合や意見を口にできるという。上に忖度し、唯々諾々と従う封建的な日本企業とは異なるのだ。

そこには家族主義経営の原点がうかがえる。

そもそも家族は一人ひとりが独立した個人であり、自己主張するし生き方も違うのが当たり前だ。そのなかで協力する体制を築き、求心力を作っていくところが経営者の腕の見せどころである。それは本物の家族でなくても可能なはずだ。実際、イタリアでも家族や一族がいない家族主義の企業は多い。

そして親は子が成長し、巣立っていくのを喜ぶものである。テラジェラートのサンポ氏は、「社員が独立して自分の店を持つのが私の夢だ。テラの名を使わなくてもかまわない」と語った。家族主義をうたう日本企業のなかには社員を囲い込み、会社に忠誠を尽くす限りは庇護するいっぽう、社員が転職や独立をするとなると手のひらを返すように冷たくなるところが少なくなかった。社員が自分の手元を離れるときこそ、家族主義経営の真偽がわかるといえよう。

デジタル化、AIの発達によって単純作業はもとより専門知識や高度技術さえ代替されつつあるいま、人間には独創性や感性といった高度なアナログ的能力がいっそう求められるようになっている。イタリアと同様に家族主義や職人の伝統がある日本は、その原点に返ることによって高い付加価値を生む経営が可能になるのではなかろうか。

太田 肇 同志社大学名誉教授

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おおた はじめ / Hajime Ohta

兵庫県出身。同志社大学名誉教授。経済学博士。主な研究分野は個人を生かす組織・社会づくり。日本における組織論の第一人者として著作のほか、働き方改革や社員のモチベーションアップなどに関するマスコミでの発言、講演なども積極的にこなす。また猫との暮らしがNHKで紹介されるなど、愛猫家としても知られる。著書は、『日本型組織のドミノ崩壊はなぜ始まったか』(集英社新書)、『「自営型」で働く時代』(プレジデント社)、『何もしないほうが得な日本』(PHP新書)、『日本人の承認欲求』(新潮新書)など40冊以上あり、大学入試問題などに頻出している。『プロフェッショナルと組織』(同文館出版)で組織学会高宮賞、『仕事人と組織』(有斐閣)で経営科学文献賞、『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)で中小企業研究奨励賞本賞を受賞。

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