データセンター投資が膨張し続ける理由。巨額資金を吸い込むAIスタートアップの収益構造とは

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このように現在のAIブームにおける投資額はかつてのインターネット・ブーム時の何倍にもなることから、仮にバブルが弾けた場合の被害もより大きくなると危惧する向きもある。

リーマンと比べると?

特にアメリカでデータセンターなどのAIインフラをクラウド・サービスとして提供する「コアウィーブ(CoreWeave)」や「クルーソー(Crusoe)」などのスタートアップ、最近ではメタやグーグルなど本来キャッシュフローに余裕があるはずのビッグテックまでもが、GPUの大量購入や巨大データセンターの建設に要する巨額の資金調達を事実上の借金に頼っている。しかも、それを「証券化(securitization)」と呼ばれる手法によって金融市場に分散させていると見られている。

この点は90年代後半から00年代にアメリカで広がった「サブプライム・ローン(低所得者向けの住宅ローン)」問題と図式が似ている。当時は巨額の住宅ローンを投資銀行が「証券化」して金融市場で大量に売りさばき、それが後にバブル化して弾け、08年の「リーマン・ショック(住宅バブルの崩壊と著名投資銀行の破綻による世界的な金融危機)」を引き起こした。

今回のAIブームでも、(前述の)コアウィーブなどAIスタートアップや(OpenAI、ソフトバンクと共にスターゲイト計画に参加している)オラクルなど中堅IT企業の「CDS(企業の債務不履行リスクを取引する金融派生商品)」の取引価格がここ数カ月で急激に上昇するなど、これらAI関連企業に関する信用不安の兆候はすでに現れている。

このようにサブプライム問題の当時と似ている側面はあるものの、現在のAIデータセンター投資の証券化はまだ始まったばかりで規模は比較的小さい。また、それらの証券(金融商品)を保有しているのは、主に「ブルーオウル(Blue Owl)」や「ブラックストーン(Black stone)」など特殊な資産運用会社にほぼ限定され、逆に言えば一般の銀行や保険会社などを中心とする世界的な金融システムにまでは波及していないと見られている。

このため今後たとえAIバブルが崩壊したとしても、それが世界的な金融危機へと発展するシステミック・リスクは小さい。簡潔にまとめれば、仮にAIバブルが崩壊した場合における被害は00年のドットコム・バブル崩壊よりは大きいかもしれないが、08年のリーマン・ショックに比べればずっと小さいだろう。

小林 雅一 KDDI総合研究所リサーチフェロー、情報セキュリティ大学院大学客員准教授

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こばやし まさかず / Masakazu Kobayashi

東京大学理学部物理学科卒業、同大学院理学系研究科を修了後、雑誌記者などを経てボストン大学に留学、マスコミ論を専攻。ニューヨークで新聞社勤務、慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所などで教鞭を執った後、現職。著書に『クラウドからAIへ──アップル、グーグル、フェイスブックの次なる主戦場』(朝日新書)、『AIの衝撃──人工知能は人類の敵か』(講談社現代新書)、『生成AI──「ChatGPT」を支える技術はどのようにビジネスを変え、人間の創造性を揺るがすのか?』(ダイヤモンド社)など多数。

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