データセンター投資が膨張し続ける理由。巨額資金を吸い込むAIスタートアップの収益構造とは

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たとえばOpenAIやアンソロピックなどのAIスタートアップが、エヌビディアやAMDのような半導体メーカーから大量のGPUを購入する見返りに、それらの半導体メーカーがAIスタートアップに巨額の投資を行う。これは傍目には、まるで半導体メーカーが自分のお金をAIスタートアップにあげて、そのお金で自社製品のGPUを買わせているようにも見える。

このように売り手と買い手の間で資金をぐるぐる回して、自然需要以上に市場を拡大しているので「循環金融」と呼ばれるのだ。

こうした手練手管を弄するAIスタートアップ各社が黒字に転換するのは早くて30年前後と見られているが、仮に首尾よく、そう運んだとしても、それまでに(業界全体で)費やされた天文学的な設備投資を彼らがいずれ回収できるか否かは現時点で定かでない。

特にOpenAIのCFO(最高財務責任者)が今月上旬、公の場で「(最悪の場合)政府が我々AI企業のバックストップ(債務保証)をするのが望ましい」と口を滑らせた。この失言をきっかけに、彼らAIスタートアップの財務見通し、ひいては(エヌビディアやグーグルなどのビッグテックも含めた)AI産業全体の将来性に対する信頼が揺らいだ。これが投資家の不安を掻き立て、先週のナスダックをはじめ株式市場の波乱を招いたと見られている。

AIバブルは崩壊するのか、しないのか?

これら投資家をはじめ市場関係者の多くは、23年以降に本格化したAIブームがここに来てバブル化しているという点でほぼ意見が一致している。ただ、そのバブルが今後本当に弾(はじ)けて崩壊するのか、また仮にそうだとすれば何時起きるのか?――これらの点では見解に相違が見られる。

まず、歴史的に見て過去のバブル崩壊は大抵利上げ、つまり金融引き締め局面で起きていたが、現在アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)は金利据え置きか利下げ、つまりどちらかと言うと金融緩和局面にあるため、バブルの崩壊が起き難い状況にある。

このためアメリカの市場関係者の中には「AIバブルの崩壊」ではなく、むしろ「Great Rotation(主役の交代)」が起きると予想する向きもある。つまり仮にエヌビディアやハイパースケーラーなど、これまで株式相場を牽引してきたAI銘柄が今後スランプに陥ったとしても、それに代わって他のセクターの株式が買われるようになり、株式市場全体のクラッシュ(暴落)は回避できる、という見方である。

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