データセンター投資が膨張し続ける理由。巨額資金を吸い込むAIスタートアップの収益構造とは

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確かに現時点で半導体メーカーのエヌビディア、あるいはグーグル、アマゾンをはじめとするビッグテック(巨大IT企業)は四半期ごとに過去を上回る売り上げ・利益を計上するなど、申し分のない業績をあげている。それに連れて彼らの株価も(多少の「山あり谷あり」はあっても基本的に)右肩上がりの上昇を続けてきた。

この結果、エヌビディアを筆頭にグーグル、アマゾン、メタ、マイクロソフト、アップル、そしてテスラを加えた、いわゆる「Magnificent 7」の時価総額は今や(アメリカの代表的な株価指数)S&P500全体の約3割を占めるに至った。これが最近まで世界的なAI相場を牽引していたとも言える。

が、これら巨大IT企業によるAI関連の売り上げ・利益の大半はOpenAIやアンソロピックなど生成AIを開発・製品化するスタートアップ企業から得られたものである。(前述のように)これらのAIスタートアップは多くの場合、マイクロソフトやアマゾンなどビッグテックが提供するクラウド・サービスを使ってチャットボットなどの生成AIを開発・運用しているからだ。

従って最終的には、OpenAIをはじめとするAIスタートアップ各社が十分な売り上げ・利益を出さない限り、どこかで業界全体の帳尻が合わなくなる。ところが、これらの新興企業は自前の生成AIを開発・運用したり、その先にあるAGIなどのスーパー・インテリジェンスを実現したりするために莫大な設備投資を重ねている。

循環金融とは何か?

ニューヨーク・タイムズなど一部メディアの報道によれば、OpenAIは今年通年で約127億ドル(約2兆円)の売り上げを達成する見込みだ。が、GPUの大量調達や巨大データセンター建設などの設備投資が嵩(かさ)むことから、差し引き約80億ドル(約1兆2000億円)の赤字を計上し、来年にはその赤字額が約170億ドル(約2兆6000億円)まで膨らむ見通しという。アンソロピックなど他のAIスタートアップも程度こそ違え、やはり巨額の赤字を出している模様だ。

これらの赤字を事実上補填するために、最近のAI業界では「循環金融(circular financing)」と呼ばれる若干不健全な慣行もしばしば見受けられる。

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