《若手の一言》で会議室が凍りつき商談即中止、顧客ゲキ切れ 「AIで御社の課題を整理しました!」「分かりやすい資料を作りたかった・・・」 

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そもそも、私は仕事の作業効率のアップ(時間短縮)のためにAIを使うのは、あまりおススメしていない。一方、商談の事前準備、提案書の作成、データ分析。これらの領域でAIは強力な味方になるだろう。

今回の出来事をもう一度思い返してもらいたい。お客様の課題を整理するために、ChatGPTを活用した――というものだが、なぜChatGPTを使う必要があったのか? 課題の整理ぐらい自分でできるはずだ。

ChatGPTが出力するまでの時間は短いだろう。だが、ChatGPTから出力された成果物を検証するのには、それなりに時間がかかるはず。結局は、自分で手を動かしたほうが速かった、ということになることも多い。

もしも課題整理する力がなくて、ChatGPTに任せたのだとしたら、これは問題である。なぜなら、ChatGPTに任せてアウトプットされた成果物(お客様の課題)を、本人が検証できないからだ。そんな「AI任せ」でお客様の課題を整理するなんて、プロのやる仕事ではない。それなら、お客様自身がChatGPTを使えばいい、という話になる。

便利さよりも「信頼」が最優先

まとめると、こうだ。

・自分でできるが、ChatGPTに任せた → 自分でやったほうが効率的
・自分できないから、ChatGPTに任せた → やる意味がない

たとえ3時間の仕事を1時間に減らすことができたとしても、わざわざAIなど使う必要はないと私は考えている。

その理由は、AIには「揺らぎ」があるため、成果物の品質が安定しないからだ。デジタル技術とAI技術は、根本的に成り立ちが異なる。デジタル技術は同じ入力なら同じ出力が得られるが、AI技術は同じ入力でも出力が変わることがある。

議事録を生成したり、ビジネスメールを書いたり、出張のホテルや接待のお店の予約をAIエージェントに依頼したりする人もいる。AIエージェントの可能性を見るにはいいかもしれない。だが、それでどれほど作業が効率化するのか。自分自身でやっても、それほど時間はかからないはずだ。

たまにしかAIを活用しない人は、この不安定性について、ぜひ着目してもらいたい。成果物が安定しないAIを使ってもいいのは、出された成果物を安定化させるスキルと経験がある人だけなのだ。

営業の本質は、お客様との信頼関係を築くことだ。どんなに道具が進化しようとも、この本質は変わらない。

もちろん、AIを正しく使えば営業活動は大きく進化する。商談の事前準備、提案書の作成、データ分析。これらの領域でAIは強力な味方になるだろう。

だからこそ、まずは基礎基本を固めることだ。アナログでも営業成績を上げられるようにし、非効率的な部分をデジタル化する。そのうえで、さらに省力化できる部分にAI活用を考える。この順番が大事である。

基礎知識や基礎スキルがないまま、いきなりAIを活用すると、思いがけないリスクと直面するケースもある。これは営業個人だけが意識すべきことではない。会社をあげて対策すべきことだ。

「慎重すぎる」ぐらいで、ちょうどいい。この意識をもって、AI時代の営業として信頼されるプロフェッショナルになってほしい。

横山 信弘 アタックス・セールス・アソシエイツ 代表取締役社長

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よこやま・のぶひろ / Nobuhiro Yokoyama

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。『絶対達成マインドのつくり方』『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。近著に『トップコンサルタントの「戦略的」勉強法』。

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