ショート動画のなかのヨウムが、おもむろに右足を高く掲げ、小首をかしげ、自分の頭を軽くつついて叫ぶ。
「アタマ、ターッチ」
今度はクチバシで自分の足を挟んで一言「ユビ、カエシテクダサイ」。放して一言「アリガトウ」。
そのシュールさに、スワイプの指が止まらない。無駄に美しい羽を後ろに伸ばし、「フェニックス!」と叫んでドヤ顔をしたかと思えば、アレクサに脱糞を報告する。言葉の意味をわかっているのかいないのか、とにかく独特なワードチョイスだ。
今回は、美しく聡明で、ちょっとお茶目なヨウム「キクノスケ」くんと、飼い主の男性、カマタさん(仮名)のお話。
伝説の天才ヨウム、「アレックス」にあこがれて
『アレックスと私』(早川書房)という本がある。アメリカの鳥類学者、アイリーン・M・ペパーバーグ博士が、ヒトと鳥が人間の言葉で交流できるのか、という疑問を掲げ、ヨウムのアレックスに30年間にわたってコミュニケーションを試みたドキュメントだ。
アレックスは50の物体の名前、7つの色、5つの形と8つまでの数を学習し、博士と英語で簡単な意思疎通ができるようになったという。
東京都在住の会社員、カマタさんは大学時代にその本に出会い、いつかヨウムと暮らしたいと願っていた。そして就職して一人暮らしを始め、仕事にも慣れた7年目、28歳でついにヨウムデビューを果たす。



















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