iPS細胞を使った再生医療、今後どうなるのか

初めて臨床研究を行った高橋政代博士に聞く

これらは10年以内には始められることが見えてきたので、もうその次を考えています。今やっているのは、シートの冷凍を含めた、たくさんの施設への輸送の研究です。また、大量生産のために、シートの作り方も改良が必要です。今は手作りですが、ヘリオスが澁谷工業などと自動培養装置を開発しています。最終形とスケジュールは全部決まっているので、これを実現するために各方面と調整を進めていきます。

――研究者と患者を診る臨床医という二足のわらじは大変なのでは?

でも、それは当然なんですよね。というのは、細胞移植以外の治療法も、検査技術も、疾患の考え方も医療側、患者さん側ともにどんどん進んでいるわけです。そうした臨床の現場を知らずに治療法を開発するなんて、怖くてできません。

患者さんが何をしてほしいのか、網膜色素上皮細胞の移植にどのくらいのニーズがあるのか、いくらくらいでできるかということも、患者さんと接していないとわかりませんから。

 

(解説)シート移植治療の流れ
患者本人の皮膚細胞を採取→iPS細胞を作製(4カ月)→質のいいiPS細胞から網膜色素上皮細胞を作製(4カ月)→質のよい網膜色素上皮細胞を選びシート状に培養(2カ月)→できたシートで品質検査を実施し、合格したものを選んでレーザーでカット→(手術)老化した網膜色素上皮や新生血管などの病巣を取り除いたあと、網膜色素上皮シートを移植。第1回の臨床試験に関わる費用は約1億円といわれている。
なかでも費用がかかるのが遺伝子検査で数千万円を要するという。また患者本人の細胞からiPS細胞を作るところからいくつもの検査を経て手術になるため約1年と時間もかかる。機材や保存場所なども含め40平米程度のスペースが必要という。このため、髙橋博士はこの治療法をF1カーにたとえる。
一方で、大衆車の開発も同時に進んでいる。ヘリオスでは、シートを作製せず細胞を液体に混ぜた浮遊液(懸濁液)を患部に注射する方法を開発中で、2017年には治験申請をする方針だ。シート移植に比べ手技は難しくなく、低侵襲・低コストの方法で、症状がより軽度な患者にも使える。また、ヘリオスでは自家(患者自身の細胞)ではなく他家(他人の細胞)を使うことを前提としている。
懸念される免疫反応(拒絶反応)は、HLA(白血球の血液型)を合わせれば網膜色素上皮ではほとんど起きないとされているが、免疫抑制剤の使用が必要かどうかは今後の治験の中で確認されることになる。ヘリオスが使用する他家iPS細胞は、CiRA(京都大学iPS細胞研究所)のストックを使う計画。他家移植であればあらかじめiPS細胞をストックしておくことで、細胞の準備期間を短縮できるため、治療に要する時間も短くできる。 

 

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