近年の急激な円安進行…なぜ「安いニッポン」が生まれてしまったのか? 今後の日本が挑むべき「リスクの高い挑戦」とは
本稿では、日本の「稼ぐ力」がどのように変化し、それが私たちの暮らしにどのような影響を及ぼしているのか。そして、自動車や電機といったかつての主役が色褪せる中、新たな希望の光と、国家の存立に関わる根源的なリスクが、どのように現れているのかを解き明かしていきます。
なぜ「貿易赤字」が常態化したのか
日本の「貿易立国」の姿は貿易統計の数字が何よりも雄弁に物語っています。
財務省が発表した2025年上半期(1~6月)の貿易収支は、2兆2158億円の赤字となり、22年から24年までで3年連続の赤字を記録しました(「通関」ベース)。これは、エネルギー価格の一時的な高騰といった短期的な要因だけでは説明がつかない、構造的な赤字体質が日本経済に定着したことを明確に示しています。
その構造変化の要因は、主に4つ挙げられます。
第1が、かつて日本の輸出を牽引した電機産業の国際競争力の低下。
第2が、企業の生産拠点をコストの高い国内から海外へ移転したことによる産業の空洞化。
第3が、そしてこれが最も深刻な要因の1つ、「デジタル赤字」の急拡大。
私たちが日常的に使うクラウドやソフトウェア、動画配信などの対外支払いが膨らみ、24年のデジタル関連サービス収支は6.65兆円の赤字となりました。かつて世界中にハードウェアを輸出していた日本が、今やその上で動くサービスを輸入する側に回ったという、劇的な逆転現象が起きているのです。
そして第4が、エネルギー構造の脆弱性。
原子力発電所の稼働停止以降、火力発電への依存度が高まり、化石燃料の輸入額が貿易収支を恒常的に圧迫しています。
この結果、日本が海外との取引全体で稼ぐ利益(経常収支)は、もはやモノやサービスの貿易によってではなくなったことを物語っています。



















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