倒木による運休防ぐ、JR西日本「集中伐採」に密着 計画運休やダイヤ変更で日中も作業時間を確保
この作業を繰り返し、太い枝、幹と刃を進め、幹についてもある程度小さく刻んでいって小さくしてから根本を切る。もちろん列車が接近する時刻が迫ると、余裕を持って作業は中断し、通過後に再開というルーティンを繰り返すため、1本の伐採にかかる期間は4〜7日間とかなりの長期戦だ。実際、今回の施工区域を対岸から観察すると、2025年7月から施工を開始したものの取材時の9月時点で、列車はおよそ10秒弱で施工区域を通過してしまう。それでも「1本の倒木でもそれが原因で輸送障害につながれば、お客さまに多大なご迷惑をおかけするだけでなく、車両の損壊や現場に急行し、速やかに異常を解決しなければならない。集中伐採はそれらを予防的に一度に解決できるもの」と藤野氏も大きな思いを本事業にかけている。
現場での作業のほか、その前段階にも壁は多い。倒木リスクがあるとはいえ、自社が所有する鉄道用地以外の樹木については、法律で上空を含めてその敷地を侵食した状態、もしくは倒木等で鉄道用地に障害が発生してからでないと伐採できない定めになっている。ほかにも国指定の保安林、自然公園法、天然記念物に係る協定など、1本の木にかかわる法律や条例がいくつにも折り重なる上、伐採対象区間の中にも複数の条件が混合するから複雑だ。個人所有の土地の場合、土地所有者に交渉し許可を得てから伐採する手順が必要だが、連絡がつかないこともたびたびあり、「所有者を調べて、ご本人のところへ訪問し、許可を得るのに非常に時間がかかる」と藤野氏は話す。
ガイドラインは出たものの……
一方、2021年10月に国土交通省鉄道局は「鉄道用地外における土地の立入り等及び植物等の伐採等に関する運用指針」を発表した。鉄道用地とそれ以外の土地に関する、鉄道事業法第22条において制定されている伐採に関する法令のうち、権利者と連絡が取れない場合については法令に則って伐採等を推し進めるためのガイドラインである。とはいうものの、「権利者に連絡が取れないことを確実に示すために住民票や戸籍を調査する必要があり、やはり相当な時間はかかる」と現場サイドはさらなる手続きの簡略化に期待を寄せている。
このように施工に長期間が必要な集中伐採だけに、施工箇所については運行上のリスクや立地、倒木時危険度などを総合的に考えて施工箇所を決定している。その判断素材として樹高、斜面勾配、植生密度を広域的かつ効率的に測量できる航空機からレーザを地表に照射し測量を行う、「航空レーザ測量」を実施し、過去の倒木傾向なども加味して総合的に施工箇所を決定している。



















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