倒木による運休防ぐ、JR西日本「集中伐採」に密着 計画運休やダイヤ変更で日中も作業時間を確保
線路の周りを木々の緑が取り囲み、その中を列車が駆け抜ける――。
言葉に表すと情緒的な風景だが、列車運行を行う鉄道事業者の立場からすれば、少し違った思いが芽生える。
倒木による長時間運休が倍増
中国山地を縦断して走るJR西日本伯備線は、山陽と山陰を連絡する重要路線の1つである。早朝から深夜帯まで、山陽新幹線と連絡して走る特急「やくも」には2024年に最新鋭車両を投入し、伯備線を経由して東京と出雲市を結ぶ「サンライズ出雲」は、定期運行する唯一の寝台特急として連日満室が続く。加えて、都市間・地域輸送の旅客列車、さらに貨物列車の運行とこの路線が担う使命は大きい。
一方で、全線にわたり山間部を走り、沿線の自然環境は厳しい。伯備線同様に山間部をゆく路線を多く保有するJR西日本管内ではここ5年で沿線樹木の倒木による長時間運休となる事象が2倍近くに増加し、看過できない状況が続く。JR西日本としても、これまでも樹木医による診断を経て危険が予見される樹木の伐採などを適宜行ってきたものの、これは1本単位の作業であり、山間部の沿線全ての樹木を一斉に処置するのは人員や期間、コスト的に鑑みても現実的な手段とはいえない。
そこで、JR西日本では倒木による運行障害の発生率低減と効率性を考慮し、「集中伐採」を進めている。これは既存の沿線伐採を進化させた新たな伐採方法であり、航空レーザ測量と大型重機等による機械施工を導入した。加えて、これまで終電と始発列車の間のわずかな深夜時間帯で行われてきた作業を、列車の計画運休やダイヤ変更を行い、作業時間を拡大、確保する時間帯集中工事なども活用し、生産性も向上した。2025年7月より伯備線で施工を開始。そこで、日々成長を続けるリスクたちと向き合う集中伐採の現場に密着した。



















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