倒木による運休防ぐ、JR西日本「集中伐採」に密着 計画運休やダイヤ変更で日中も作業時間を確保

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筆者が向かったのは伯備線備中高梁―木野山間の現場だ。「現存12天守」で知られる国指定重文の備中松山城も近く、線路の西側には高梁川が流れるおだやかな光景が広がる。一方で東側はすぐに急峻な斜面となっており、推定樹齢50年を超える巨木が立ち並び、線路のすぐそばまで迫っているほか、一部の枝については線路上に覆い被さっている状況だ。

今回の施工は、列車の運行中の日中時間帯に行う。こうした工事は終電後の深夜時間帯に実施されることもあるが、「木に登って行う作業もあり、明るい時間帯のほうが安全かつ効率的に作業を進められるほか、作業人員確保と負担軽減の面でもメリットがある」と施策の推進を担当するJR西日本中国統括本部施設部、藤野隼揮氏が語る。線路直上の施工など、線路内に作業用車を配置する深夜でないとできないような作業以外では、日中作業の比率を重視している。

作業箇所までは列車運行中の線路を横断する。列車往来の管理は2人で行うダブルチェック体制が取られており、列車ダイヤ、列車遅延等を確認し、さらに見張り員とGPS機器を携行し、多重系の安全体制をとって線路内に立ち入る。

急斜面での危険な作業

現場は切り立った斜面で「他線区に比べて線路直近まで急峻な斜面が接近した箇所が多いのが伯備線の特徴」(藤野氏)とのことで、写真家という職業上、こうした斜面には慣れている自負がある筆者でも、自ずと足元に力が入る。つまずきそうになる細かな枝や小石もあり、これで視野が限られる夜間だったらと想像すると正直恐ろしく、さっそく日中作業のメリットを体感した。

斜面というよりは直登が必要なほどの壁にすら見える(筆者撮影)

現場では高さ10mを優に超えている巨木を伐採している最中で、地上で作業を指示する者と同じく地上で作業援助をする者、そして対象木に登っている作業者と複数名で作業にあたる。伐採というと、木の根本に刃を入れて一気に倒すようなイメージを持つかもしれないが、相手は巨木で、その下には線路もある。加えて、電車が行き交う伯備線は線路上に架線が張られた電化区間ということもあり、作業の難易度は自ずと上がる。

そのため、まず作業を安全に効率的に進めるために、施工区域の下刈りを行い、地上側の準備を整える。そして対象木にロープをかけ、昇柱器と呼ばれる靴に装着する刃の付いた器具を使用して作業者が自ら対象木の先端部分へ登り、細かい枝を切る枝打ち作業を行う。この時も切断した枝を地面に自然落下させるわけにはいかないので都度、枝にロープをかけて切断した枝を慎重に地面に下ろす。

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