アップルのiPhone Air、なぜ販売低迷? 薄型スマホが伸び悩む背景とユーザーニーズの乖離

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しかもアップルが販売する純正のバッテリー「iPhone Air MagSafeバッテリーパック」は本末転倒な製品だ。アップル純正ならではのデザインの良さや装着したときの一体感に好印象を受ける一方、背面に取り付けたときの本体厚みは10mmを超える。そして価格は1万5800円だ。「iPhone Air」に加えこのバッテリーを購入すると合計17万5600円となる。より高性能な「iPhone 17 Pro」の17万9800円と変わらなくなってしまう。

iPhone 17 Pro
薄型のバッテリーは価格が高く全体の厚さも増してしまう(アップル公式写真)

「iPhone Airが自分にぴったりのスマートフォン」、そう考えるユーザーは一定数存在する。しかし多くの消費者はサイズやデザインより価格性能比、すなわちコスパを重視するだろう。そうなると「iPhone Air」は残念ながら中途半端な位置づけの製品になってしまっていると感じられる。

新興国で人気の薄型スマホ

サムスン電子の「Galaxy S25 Edge」もアメリカでの販売価格は1099ドル(約16万8000円)。同じ画面サイズで一般的なサイズであり、トリプルカメラやより大きいバッテリーを搭載する[Galaxy S25+」が999ドルだ(約15万3000円)。あえて高い価格を出して買いたくなるほど「Galaxy S25 Edge」は差別化されるデザイン・仕上げにもなっていない。「iPhone Air」同様に割高感が強く感じられるのだ。

では薄型スマートフォンは2025年に登場したばかりにもかかわらず、すぐに消え去ってしまう失敗作なのだろうか? 実はユーザーニーズとマッチした製品であればヒット商品にもなりうるのだ。一例としてフィリピンの事情を見てみよう。

フィリピンでは現在、アップルとサムスン電子以外から3機種の薄型スマートフォンが販売されている。テクノの「Spark Slim」は5.93mm厚、5000万画素カメラ、5160mAhと一般的なスマートフォンと変わらぬ容量のバッテリーを搭載。インフィニクスの「HOT 60 Pro+」は5.95mm厚、カメラとバッテリー性能は同等だ。どちらも日本では知られていないが、東南アジアやインド、アフリカでは誰もが知っているメジャーメーカーである。

この2つのモデルは現地メディアによると「薄型だがバッテリーが持つ」「カメラは必要十分」と好評価を受けている。またSNSを見るとコスパの良さも人気になっている。この2機種は5G通信には非対応、チップセット性能も「iPhone Air」に比べたら大幅に低い。ところが価格はそれぞれ9499ペソ(約2万5000円)、8999ペソ(約2万3500円)だ。フィリピンの一般市民でも無理なく買える価格設定なのだ。

HOT 60 Pro+
2万台で買えるインフィニックス「HOT 60 Pro+」(筆者撮影)
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