アップルのiPhone Air、なぜ販売低迷? 薄型スマホが伸び悩む背景とユーザーニーズの乖離

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「iPhone 17」シリーズ発表会直後に実機を触ったメディア関係者の多くが「iPhone Air」を賞賛し、海外メディアの中には「今回の主役」「デザインのイノベーション」「今年最大の話題の製品」とポジティブな反応を示すところも多かった。特に今年は小型・軽量モデルの「iPhone SE」が廃止され、大画面・基本機能の「iPhone 16e」に置き換えられたこともあり、サイズ感はともかく軽量なiPhoneを求める人にとって「iPhone Air」は救世主になるとも思われたのだ。

だが日本の家電量販店では「iPhone 17」シリーズ発売直後、一部の店舗では「iPhone Air」のみ在庫がある状況となり、例年通りであれば全モデルが即完売や長い予約待ちとなるのとは対照的な展開となった。

そして筆者の住む香港でもこれは同じ状況だった。香港では新型iPhone発売直後に一般市民による転売が当たり前のように行われている。その転売されたiPhoneは日本やロシアなど世界中に輸出されているのだ。しかし転売品を取り扱うスマートフォンの買い取り店では「iPone Air」の取り扱いを行わないところが多数だった。需要の読みのプロである転売業者は「iPhone Airは売れない」と判断したのだ。

それでもSNSを見ると「iPhone Air」の購入者は少なくはなく、一定の需要があることは明らかだ。また「iPhone Airを買って満足」という声も多く聞かれており、その製品コンセプトに価値を感じるユーザーは確実に存在する。それでもなぜ「iPhone Air」は他の「iPhone 17」シリーズほど売れていないのだろうか?

ユーザーニーズとのミスマッチ

「iPhone Air」は他のスマートフォンにはない薄さに加え、シンプル化を徹底し余計なものをそぎ落とした製品とも言える。そのコンセプトはミニマリストやシンプルライフを志向するユーザーにとって大きな魅力になりうるだろう。筆者自身、発表を目の当たりにしたとき、「もし無印良品がスマートフォンを作ったなら、きっとこのような形になるのではないか」と感じた。実は筆者もセカンドスマートフォンとして「iPhone Air」の購入を検討しているほどだ。

だがiPhoneを求めるユーザーのすべてがそのようなコンセプトを求めているわけではない。たとえば「iPhone SE」ユーザーはそのサイズに加えて価格が比較的安価なことに魅力を感じていただろう。一方で従来のiPhoneを使っていた層にとって、たしかに「iPhone Air」の薄型コンセプトは魅力だろうが、機能を考えると割高感を覚えてしまうのではないだろうか。

「iPhone Air」の日本での価格は15万9800円から。一方「iPhone 17」は12万9800円から購入できる。「iPhone 17」のほうがメモリ容量や画面サイズは劣るものの、3万円安いにもかかわらずデュアルカメラとより大型のバッテリーを搭載している。また「iPhone Air」がスリムだからと言っても、結局多くの人はケースを付けてしまうだろう。デザイン面も「iPhone 17」より大きくすぐれていると感じられない人も多いのではないだろうか。

さらに「iPhone Air」には決定的な弱点がある。2800mAhしかないバッテリーサイズだ。最新チップセットの省電力機能やOSの最適化により1日持つとのことではあるが、動画の長時間視聴やAIアプリの使用など、スマートフォンの使い方は以前よりヘビーになっている。少ないバッテリー容量では物足りなさを感じる人もいるだろう。

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