「武器」化されたレアアース、日本の産業界は耐えられるか。サプライチェーンを牛耳った中国

山信金属は東奔西走する。レアアース商社には何度も問い合わせたが「わからない、私たちも困っている」と返された。
「うちは大丈夫」と返答があった別のレアアース商社に発注をかけたが、しばらくすると「やっぱり入らない」との連絡を受ける。
調達部が奔走する一方、営業部は納品先企業に納期遅れの事情を説明して回った。
最終的には数カ月の遅れで、受注したネオジム磁石加工品のすべてを納品できた。ただ、複数の商社にオーダーしていたことから、工場には余剰在庫が積み上がった。
政府は「備蓄」を推奨するが、山田氏は「われわれのような中小企業にとって在庫の負担は重い」と顔をしかめる。先日、取引先の銀行が突然、「工場を見学したい」とやってきた。在庫を確認していったという。山田氏は空を仰いだ。
「米中対立が再燃すれば、当社の事業はまた不安定化する」
いつでも規制を再発動できる
対立再燃の火種は消えていない。アメリカは半導体の対中輸出規制を解いておらず、中国はいつでもレアアースの輸出規制を再発動できる状態にあるからだ。
米中は近年、最先端技術の開発に不可欠な戦略物資を「武器」化し、外交的な目標を達成するための手段とするケースが増えている。とりわけレアアースの輸出規制が産業界に与える影響は大きい。
リチウムやタングステンといった、ハイテク分野の製品に欠かせないレアメタル(希少な非鉄金属)のうち、とくに希少性が高い17元素がレアアース(希土類)と呼ばれる。ネオジムのような世界に分布する軽希土と、ジスプロシウムやガドリニウムなど中国に偏在する重希土に大別される。いずれもスマートフォンや電気自動車(EV)、戦闘機といったハイテク製品の製造に欠かせない重要鉱物だ。

















