高市首相は、当選直後、こう熱く語りました。
「働いて」をなんと5回も繰り返していたのです。「『ワークライフバランスを捨てる』とは何事だ」と批判が上がりましたが、一方で擁護する声も少なくありませんでした。
自由主義層にもぐっさり刺さった
今の政治家たちが「人の税金でおいしい思いをし、ちっとも働かず、惰眠をむさぼる上級国民」と憤る人たちからすれば、彼らを「馬車馬のように働かせ」、自らも寝食忘れて「皆さんのために働きます」と力強く宣言されたら、心揺さぶられるでしょう。
「昔がむしゃらに働いていたから、経済成長があった」と信じる昭和ノスタルジア層、「働きたい人が働いて何が悪い」という自由主義層にもぐっさり刺さったようです。
彼女のこれまでの発言の中に見え隠れするのが、徹底した「自己犠牲・献身アピール」戦略です。
古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、説得には3つの条件があると説きました。①「パトス」(聞き手の感情へのアピール)、②「ロゴス」(メッセージの論理性、正当性)、③「エートス」(話し手の信頼性)です。
この記事(連載2回目)でもご紹介したように、彼女の話し方には、聞き手の「感情」を揺さぶる仕掛けが数多く埋め込まれていますが、同時に、よどみなく、雄弁に「論拠」、「エビデンス」を語るのが大きな強みです。「エモーショナル」かつ「ロジカル」にアピールするわけですが、もうひとつの「エートス」についても実は戦略的に演出している節があります。



















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