高市首相の「サナエノミクス」は有権者の最大要求を無視? 政策ブレを生む既得権益への傾倒とアベノミクスの残滓

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安倍元首相が特定の部門で保護主義やテクノナショナリズムに携わったのは事実だ。しかし、歴史認識問題を除けば、経済・安全保障政策においては国際主義者だった。

環太平洋パートナーシップ(TPP)はその典型的な例だ。農業保護主義が日米間の合意を大きく遅らせたのは事実だ。しかし、ドナルド・トランプ氏がTPPから離脱した際、安倍元首相はTPPを存続させるために行動した。

また、安倍元首相は外国人労働者の増加も主導した。高市首相はこの点については、トランプ的なレトリックを用いて移民や観光客について語り、後退の姿勢を見せている。

高市首相は安倍元首相のような影響力を欠いている

安倍晋三氏は党内を掌握した王だったが、高市早苗氏はそうではない。

1年前、高市氏は消費税の一時的な引き下げは検討に値するアイデアだと述べていた。しかし、首相に就任して以来、高市首相は麻生太郎氏を自民党副総裁、鈴木俊一氏を自民党幹事長といった財政タカ派の重鎮を要職に任命した。その後、高市首相は減税を排除した。

高市首相はまた、トランプ氏が石破氏に押し付けた関税・投資協定の一部を再交渉するという発言も撤回した。テレビ討論会で、高市首相は協定に不平等な要素があると述べた唯一の候補者だった。しかし、今、高市首相は「日米が合意したことを覆すことはしない」と述べている。

さらに、その不平等な協定をトランプ氏と交渉し、MAGA帽の写真で悪名高くなった赤澤亮正氏を新しい経済産業大臣に任命したのだ。

しかし、財政タカ派も容易にその意思を押し通すことはできない。日本が財政赤字を抱えているのは、政治家がバラマキを好むからという理由だけではない。

家計所得がこれほど停滞しているため、政府が経済を維持するための「最後の買い手」にならざるを得ないことが主な原因だ。過去10年間で、政府支出はGDP成長の半分を占めていた。

現実は、困難な政策ジレンマを生み出している。高市首相がこれらをいかに乗りこなすかが、高市首相のハネムーン期間がどれだけ続くかを決定づけることになるだろう。

リチャード・カッツ 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Richard Katz

リチャード・カッツ(Richard Katz)/東洋経済 特約記者。 カーネギー国際問題倫理評議会の元シニアフェロー。日本に関する月刊ニューズレター「The Oriental Economist Report」を20年にわたり発行、現在はブログ「Japan Economy Watch」を運営。フォーリン・アフェアーズ、フィナンシャル・タイムズなどにも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。著書に『「失われた30年」に誰がした』『腐りゆく日本というシステム』『不死鳥の日本経済』

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