高市首相の「サナエノミクス」は有権者の最大要求を無視? 政策ブレを生む既得権益への傾倒とアベノミクスの残滓

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高市氏は賃金計画の策定も「民間企業が決めること」との理由で拒否した。安倍晋三氏を含む歴代の首相とは異なり、最低賃金の引き上げ目標も提示しなかった。

また、消費税の引き下げも一切を排除した。たとえ食料品を対象とした一時的なものであっても、認めなかった。しかし、野党による減税案は、過去2回の選挙で野党が自民党に勝利した重要な理由の一つだった。

もっとも、高市首相は国会での施政方針演説で、非課税となる所得税の最低課税ラインを103万円から160万円に引き上げると公約した。これを実際に国会で推し進めるかどうかは、まだ明らかになっていない。

既得権益とエネルギーの幻想

一部のコメンテーターは、高市首相を真剣な政策通、あるいは聡明な人物と呼んでいる。しかし、私にはドナルド・トランプ氏を彷彿とさせる非現実の世界に迷い込んでいるように思える。高市首相は、さまざまな既得権益団体の要求に応えることを正当化する神話を振りかざすのだ。

エネルギーに対する方針を見てみよう。高市首相は安全保障のため、日本のエネルギー自給率を100%にすると誓っている。それなのに、石炭火力発電所や天然ガス火力発電所の継続的な利用を支持している。石炭や天然ガスがどこから来ると思っているのだろうか。

高市首相は、太陽光発電への支援も削減する計画だ。高市首相は「我々の美しい国土を外国製のソーラーパネルでさらに覆うことに反対だ」と声高に主張している。

さらに、原子炉が18〜24カ月ごとにウラン輸入を必要とするにもかかわらず、原子力エネルギーの増強を望んでいる。そして、最大の幻想は、2030年代までに核融合発電が商業的に実現可能になるというものだ。大きな進展があったとはいえ、ほとんどの専門家は、核融合が商業的な現実となるのは少なくともさらに30年後だと見ている。

高市首相が円安を支持する理由については、「自動車産業とその関連産業を、いかなる犠牲を払ってでも守る」という高市首相の宣言と関連があると見られる。これには、おそらく消費者物価の上昇という犠牲が伴うだろう。

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