高市首相の「サナエノミクス」は有権者の最大要求を無視? 政策ブレを生む既得権益への傾倒とアベノミクスの残滓

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

最後に、高市首相は低金利と大規模な財政赤字を両立できると考えている。しかし実際には、赤字の拡大はインフレを悪化させ、日銀に利上げ圧力をかけることになるだろう。

日本の最大の問題は生活水準の停滞だ。高市首相が解決策を提示しないだけでなく、人々が問題視していること(高い物価)が実際には問題ではないと主張するようなことがあれば、高市首相の支持率が長く高水準を保つのは難しいだろう。

高市首相の「第三の矢」 vs. 安倍元首相の「第三の矢」

2021年の最初の総理の座への挑戦の際、高市首相は安倍元首相との間で興味深い違いを明確にした。

安倍氏が「第三の矢」として目指したのは、「民間の活力を引き出す成長戦略」だったのと対照的に、高市首相が狙いを定めているのは、主要な技術や産業に対する「大胆な危機管理投資と成長投資」だ。高市首相は、官民連携を通じて、政府が各分野に資金を注ぎ込むことを望んでいる。

日本の産業政策は、高度成長期における自動車やエレクトロニクスのように、市場の発展を加速させたときに最も成功してきた。一方、国家が民間部門の代替を試みた場合、産業政策は繰り返し失敗している。

例えば、第5世代コンピューター、ウラン再処理、原子力発電の高速増殖炉、そして高市首相が個人的に推進する国費で賄われるラピダスのような取り組みだ。

ラピダスの目標は、2027年までに量産型の2ナノメートル半導体を生産し、他国を追い越すことだ。政府はこの取り組みに4兆円超を注ぎ込んでいるが、専門家はこれが採算に乗るかどうかを疑問視している。

高市首相のターゲットは人工知能、半導体、核融合など広範囲にわたる。しかし、それはさらに踏み込んで、「すべての製造業が国内で適切に製品を生産できることを確実にすることが、経済安全保障の絶対的な基盤だ」という準鎖国的な見解にまで及んでいる。

次ページ国際主義からの後退
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事