先生 日本は原油のほぼ100%を輸入しているので、原油価格が上昇すれば、ガソリン価格、さらには物流費から一般消費財の価格まで上昇してしまいます。
陽菜 まさに、遠い国の出来事が、私たちの生活にも大きく影響するということですね。
地政学リスクでビジネスにも大損害?
先生 ビジネスでも、前にお話ししたとおり、投資していた国で紛争が起きれば、その投資が台無しになる可能性もあります。
実際、2022年2月のロシアのウクライナ侵攻後、ロシアに進出していた西側先進国の企業は、軒並みロシアからの撤退を余儀なくされました。
陽菜 やはり大きな損害が出たのでしょうか?
先生 米国のマクドナルド社は、ロシアで約850店を展開していましたが、2022年5月に全事業を売却して撤退しました。その損失額は約14億ドル(約2100億円)と言われています。資源会社のエクソンモービル社も、ロシアでの石油・ガス開発プロジェクトから撤退し、約34億ドル(約5100億円)を失ったとされています。
陽菜 とんでもない金額ですね!
先生 こうした企業の損失は桁違いですが、数百億円規模で損失が出た日本企業もあります。それだけ、地政学リスクは企業の事業、さらには経営そのものに大きな影響を与えます。
陽菜 下手をすると、会社そのものが危なくなりますね。
先生 さらに企業が注意すべきは、グローバルなサプライチェーンへの影響です。
陽菜 うちの会社も、部品を製造するための原材料などを世界中から調達していると聞いています。
先生 世界のどこかで紛争が起こって、その輸送ルートの一部でも影響を受けてしまうと、工場がストップしてしまったりもします。
陽菜 そう考えると、世界はリスクだらけですね……。企業としては、地政学リスクにどう備えればよいのでしょうか?
先生 これまで見てきたように、地政学リスクは、自然災害とは異なり、ある程度想定することができます。定期的に、どこにどのようなリスクがあるのか、その発生可能性はどのくらいかといった「地政学リスク評価」を行うことが重要です。
陽菜 難しそうですが、たしかに、それはやっておいたほうがよさそうですね。今思えば、海外事業部で最初に参加した会議も、そういった内容だったような気がします。
先生 同時に、自社がどの国・地域に、どのくらい投資し、どんな事業を行っているのか、どの国とどのくらいの貿易を行っているかといった、事業の「地域ポートフォリオ」をしっかり把握し、モニターすることもお勧めします。



















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