中原:今では、アベノミクスの実質的な失敗により、インフレ期待がまがい物だったことが一般の人々にも理解できるようになってきています。おまけに、日本社会の高齢化が進み、貯蓄を取り崩す年金生活者が増えている中、穏やかなデフレのほうが暮らしやすいと考える人々が増え続けてきています。
そんなわけで、原油安によってデフレになるのは、国民経済にとって好ましい状況であるというのは、新しい経済の捉え方として常識になっていくでしょう。「原油安が誤算だった」と説明する日銀の目指すインフレには、いったい何の意味があるのか、私にはまったく理解しようがありません。日銀の黒田総裁は意固地にならずに、いい加減に日本人の価値観を理解する必要があるのではないでしょうか。
今後は円高トレンドに転換する
三井:日本経済の閉塞感が漂う中で、中国経済の減速は日本経済に深刻な悪影響を与えるとお考えですか。
中原: 企業部門を中心にある程度の悪影響は受けると思いますが、日本企業はドイツ企業と比べて中国市場に深く食い込んではいない分、深刻な悪影響は受けないと考えています。日本経済にとって本当に恐いのは、決して中国経済の減速ではなく他の要因になりますが、それは長い話になりますので新刊をご覧いただければと思います。
三井:最後に、円相場の転換点が近いと予想されていますが、それはどのような理由からでしょう。
中原: 米国の利上げがあるという前提に基づけば、早ければ2015年12月に、遅くとも2016年前半には今の円安トレンドは終焉すると思っています。円安トレンドの終わりを決定付けるのは、米国の利上げが始まる前後の1カ月以内に訪れるのではないでしょうか。
そのいちばんの根拠は、米国が2012年9月にQE3を開始した直後に、1ドル75円台という円高のクライマックスが訪れて、その後に歴史的な円高が終焉しているからです。要するに、今回予想する円安トレンドの終焉はその逆バージョンであると考えられるわけです。
今のドル円相場は、日米の金融政策の方向性が真逆になる中で、両国の金利差が拡大するという短中期的な相場予測の要因により、大きく歪んでしまっているといえます。大きく歪んでしまった相場が正常化に向かう過程では、円高が進まざるをえないと考えるのが必然的なのです。
三井:私も新刊を読ませていただいて、中原さんの考え方に賛同できるようになりました。2016年の世界経済や日本経済がどのような方向に行くのか、円高トレンドに転換した円相場はどこまで高くなるのか、株価の方向性はどのようになるのか、とても論理的に理解できました。ありがとうございました。
中原: こちらこそ、ありがとうございました。 (撮影:梅谷秀司)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら