
一人ぼっちの人生に、小さな家族ができた幸せ
プレーリードッグは野生下では群れで生きる動物。まる子さんはもう1匹、女の子を迎えることを決心する。それが「南天ちゃん」だった。

計画は、半分失敗、半分大成功。南天ちゃんは、まる子さんの手に負えないほどのお転婆だった。とにかく噛む、ひっかく。走り回り、掘り、かじり、破壊する。生傷が絶えず、傷口からの細菌感染を防ぐために破傷風の予防注射を獣医師に勧められたほどだった。しかし、牡丹ちゃんに対してはまったく違った。
「牡丹は最後まで私にはツンデレだったけど、母性の強い子で、まるで本当の娘のように南天の面倒を見てくれました。南天も、牡丹の言うことはちゃんと聞くんです。私の言うことなんて全然聞いてくれないのにね」
多少バイオレンスではあるものの、幸せに満ちたひとりと2匹の生活が続いていった。プレーリードッグは、挨拶の代わりにお互いハグやキスをする。仲睦まじい2匹の姿を見るだけで、まる子さんの心は満たされていった。一人ぼっちだったまる子さんに、小さな家族ができた。

しかし、どれだけ幸せでも、別れのときはやってくる。牡丹ちゃんは歳を重ね、病にとり憑かれてしまう。必死につなぎとめようとするまる子さんの指から抜け落ちるように、命は少しずつ侵食されていった。砂時計の砂が零れ落ちるように、牡丹ちゃんはまる子さんの腕の中で、最後の呼吸を終えた。
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