依頼主である息子は、当時の状況をこう振り返る。
「ちょっと母親とは連絡は取れなくて。母のきょうだい(姉と兄)が近くに住んでいて、その方が『連絡が取れない』と。携帯電話も全然つながらないので実家まで来たけど、鍵がかかっていたんです。そうしたら、近所の人が『病院に運ばれた』と教えてくれました。自宅で倒れて、外に自力で這い出て助けを求めたらしいです」
そのときまで、母親がどういう生活をしているか、まったく知らなかった。
「もう目も見えていなくて、体も悪く、支払いといった類が全然できていなかったようです。電気、ガス、水道、ライフラインはすべて止まっていました。どうやって生活していたかも、連絡していなかったからわからないし、聞いても言わない人でした」


親子だからこそ憎しみ合ってしまう
作業に同席していた息子の妻も、義母との関係について話した。
「お母さん自身が人と連絡を取るタイプじゃないというか。他者を拒絶するタイプで、『連絡してくるな』みたいな感じの人だったんです。これまでにも連絡は試みていましたが、拒絶されるので、ここ10年は疎遠になっていました」
息子夫婦も何かをしようとはしていた。しかし、当の母親がそれを頑なに受け入れてくれなかったのだ。
なぜ、ここまで事態が悪化するまで気づけなかったのか。二見氏は、親子だからこそのコミュニケーションの難しさがあると指摘する。

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