この家の住人は、当初リビングの隣にある和室で生活していたようだ。しかし、リビングからなだれ込んでくるゴミにスペースを奪われ、やがてそこもゴミに埋もれた。そして、生活の拠点は2階の洋室へと移された。
布団が敷かれたその部屋もまた、ちゃぶ台とテレビを除けば、床一面が生活ゴミで覆い尽くされている。もう1つの和室は、ダンボールに入ったままの生活用品や衣類が投げ込むようにして積み上げられ、物置と化していた。

もっとも悲惨な状態だった「トイレ」
しかし、この家でもっとも凄惨な状況だったのは、トイレだった。現場で作業にあたった二見氏が話す。
「1階と2階にトイレがありましたが、先に1階が使えなくなり、次に2階を使うようになったようです。トイレには水が入った2リットルのペットボトルが何本も置かれたままでした。水が流れないので、それで糞尿を流そうとしていたのでしょう。しかし、それでも流れないので、使用済みのトイレットペーパーがそのまま床一面に散乱している状態でした」
残された排泄物は腐敗していた。便器は詰まっているし、汚れも染みついてしまっている。すべてちりとりで取り除いたものの、床にまで浸食していた。この家を再び人が住める状態にするには、大規模なリフォームが不可欠だった。


「300万~400万円ぐらいは絶対にかかるでしょう。その費用を捻出するぐらいなら、家を現状のまま安値で売却するのが一番いいのでは、とアドバイスしました」(二見氏、以下同)
一体、どうしてこんなことになってしまったのだろうか。
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