上海に拠点を置くスマートフォン向けのゲームメーカー、上海悠星網絡科技――。日本では「Yostar(ヨースター)」の名称で展開し、日本のアニメファンを次々と虜(とりこ)にしている。ゲームプレイヤーが教師役となり、美人学生たちと学園ドラマを楽しむゲーム「ブルーアーカイブ」や美少女ゲーム「アズールレーン」などを配信し、人気を呼ぶ中国メーカーだ。
JR東日本は現在、全国の主要駅を中心に、駅を従来の「交通拠点」から「新たなビジネスを創発する拠点」へと転換を進めている。2024年からは、秋葉原駅をモデルケースとし、「圧倒的インパクトを創出する」場として、駅構内に大型ビジョンと店舗スペースを一体化させた空間を企業側に提供。その第1弾で、アキバの世界観に合致しているとして選ばれたのが、中国企業のヨースターだった。同社が用意した広告費は1年間で3億円を超える。
「ヨースターは、ゲームキャラクターの見た目が特にかわいいです。ゲームのクオリティーも日本のものと変わりません」。駅構内で出会った大阪府在住の男子大学生、吉田成孝さん(22)も、そう興奮気味に話してくれた。就職活動で上京したついでに、秋葉原駅構内にあるヨースターの公式販売ショップに立ち寄り、グッズを買い求めに来たところだったという。2年前、友人の勧めでヨースターのゲームを始めて以来、「すっかりその魅力にはまってしまった」。
アキバのあちこちに出現「実は中国」な企業広告
駅を出て、今度は秋葉原の中心部、電気街へと記者は向かった。多くの外国人観光客を横目に、立ち並ぶビルを見上げる。すると、ここでもひときわ派手な看板が目に飛び込む。中国大手ゲームメーカー「上海米哈游網絡科技(miHoYo、ミホヨ)」の人気ゲーム、「原神」の広告だ。原神は、ゲームプレイヤーが旅人となり、広大な世界を冒険するアクションロールプレイングゲーム(アクションRPG)として知られ、日本人の間でも絶大な人気を誇る。
こうした今のアキバを彩るゲームやアニメの巨大広告看板の数々――。何気なしに秋葉原の街を歩くだけでは、おそらく、それが中国企業のものとは到底気付かない。こんな「隠れ中国」が今、アキバのそこかしこに出現する。アキバは、もう日本のゲームやアニメの独壇場ではなくなっている。
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