
処罰を受けた山東京伝の代作を手がけた男
「蔦重に『書け』って!!」
寛政3(1791)年3月、前回の大河ドラマ「べらぼう」では、戯作者の山東京伝によって描かれた『仕懸文庫(しかけぶんこ)』、『青楼昼之世界錦之裏(せいろうひるのせかいにしきのうら)』、『娼妓絹篩(しょうぎきぬぶるい)』の3作が、幕府によって「好色本」とみなされ、出版取締令に触れるとしてすべて絶版となった。
作者の京伝も出版元の蔦屋重三郎も、厳しい取り調べを受けることになった。引っ捕らえられた京伝が言い放ったのが、冒頭の言葉である。すべて蔦重のせいだというのだ。
通常のドラマならば、主人公に責任がかぶせられれば同情が集まるものだが、今回ばかりは「確かに蔦重が悪い」と。視聴者もみな京伝のほうに感情移入したことだろう。
ドラマでも描写されたが、実際に蔦重は渋る京伝を説得して、この3作を書かせたようだ。京伝に危ない橋を渡らせるにあたって、この3冊については「教訓読本」と記した袋に入れることで、あたかも好色本にはあたらないかのように見せかけた。
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