「お前のやってることは遊びや」とセンスを全否定されたが…SNS映え「カワイイ和菓子」が大ヒット、逆風を乗り越えた3代目の"ブレない信念"
父・克行さんとの関係性はというと、表面上だけ見れば、いまだに冷ややかなままだ。
「父の、私に対するぶっきらぼうな態度や口の悪さは相変わらずです(苦笑)。でも、父が社長になってから、和菓子を卸すスーパーの店舗数がぐんと増えたという事実もあって。和菓子全盛期の頃の会社を成長させてくれたのは、まぎれもなく父なんです」
沙邦莉さんは、父の功績を認めつつ、複雑な胸の内を明かす。
「売れてるということは、ええ商品」
「時代の過渡期には、伝統のあり方ややり方も変わる。その流れに戸惑っているのかもしれませんね。あー、でもなあ、もっと素直になってほしいなあ」
沙邦莉さんは、天を仰ぎながら笑う。その瞳には、父・克行さんともっと分かり合いたいという、娘としてのピュアな願いであふれているように筆者には見えた。
9月某日、テレビ番組の取材をきっかけに、父・克行さんは、娘が開発した「どらぺちーの」を初めて口にした。
「はは、美味しいですね」
面映ゆそうな表情を浮かべる父・克行さんの背後で、沙邦莉さんは緊張した面持ちで笑みを浮かべていた。
喧嘩するほど仲がいいとは言うが、違う方向を見ているようで大切にする根っこは同じように、側からは見える。
「売れてるということは、ええ商品」
家族の前では決して本音を言わない克行さんが、つぶやく。祖父と父が大切に育んできた和菓子が、次世代の沙邦莉さんの繊細な感性と柔軟な発想によって、より輝きをはなって引き継がれていく。

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら