「お前のやってることは遊びや」とセンスを全否定されたが…SNS映え「カワイイ和菓子」が大ヒット、逆風を乗り越えた3代目の"ブレない信念"

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父・克行さんとの関係性はというと、表面上だけ見れば、いまだに冷ややかなままだ。

「父の、私に対するぶっきらぼうな態度や口の悪さは相変わらずです(苦笑)。でも、父が社長になってから、和菓子を卸すスーパーの店舗数がぐんと増えたという事実もあって。和菓子全盛期の頃の会社を成長させてくれたのは、まぎれもなく父なんです」

沙邦莉さんは、父の功績を認めつつ、複雑な胸の内を明かす。

「売れてるということは、ええ商品」

「時代の過渡期には、伝統のあり方ややり方も変わる。その流れに戸惑っているのかもしれませんね。あー、でもなあ、もっと素直になってほしいなあ」

沙邦莉さんは、天を仰ぎながら笑う。その瞳には、父・克行さんともっと分かり合いたいという、娘としてのピュアな願いであふれているように筆者には見えた。

9月某日、テレビ番組の取材をきっかけに、父・克行さんは、娘が開発した「どらぺちーの」を初めて口にした。

「はは、美味しいですね」

面映ゆそうな表情を浮かべる父・克行さんの背後で、沙邦莉さんは緊張した面持ちで笑みを浮かべていた。

喧嘩するほど仲がいいとは言うが、違う方向を見ているようで大切にする根っこは同じように、側からは見える。

「売れてるということは、ええ商品」

家族の前では決して本音を言わない克行さんが、つぶやく。祖父と父が大切に育んできた和菓子が、次世代の沙邦莉さんの繊細な感性と柔軟な発想によって、より輝きをはなって引き継がれていく。

母・美保子さん(左)、和菓子職人・篠崎さん(中央)、沙邦莉さん
母・美保子さん(左)、和菓子職人・篠崎さん(中央)、沙邦莉さん。村井製菓を訪れると親戚の家に遊びにいったような感覚に包まれる。厳しさと温かさが同居する居心地の良い時間が流れている(筆者撮影)
【前編を読む】無報酬で家業の“老舗和菓子屋”に入った3代目女性、「伝統を壊すな」と職人からの猛反発を受けても、経営改革に乗り出した“覚悟”
野内 菜々 フリーライター

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のうち なな / Nana Nouchi

兵庫県姫路市在住、大阪出身のフリーライター。京都府南山城村地域おこし協力隊、地域情報誌やWebサイトのライター活動を経て、「ローカル」「継ぐ」を取材テーマに、ヒト・モノ・コトをジャンルレスで企画、取材・インタビュー、執筆を行う。趣味は、家庭菜園、自然観察。1979年生まれ。
X:@nana_nouchi(https://x.com/nana_nouchi)

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