「お前のやってることは遊びや」とセンスを全否定されたが…SNS映え「カワイイ和菓子」が大ヒット、逆風を乗り越えた3代目の"ブレない信念"

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しかし、世の中が元気がない。「誰かに喜んでもらいたい」気持ちをプラスに働かせた沙邦莉さんは、遊び心を発動させる。

練り切り
沙邦莉さんが開発した色鮮やかな練り切り。中央が話題を呼んだアマビエ。胴体部分が虹色のグラデーションを帯び、見ていて幸せな気持ちになる意匠だ(村井製菓提供)

モチーフにしたのはアマビエだ。「アマビエの姿を見た人は疫病から逃れられる」と注目を集めていた妖怪を、伝統和菓子の枠を超えた色鮮やかでかわいいモチーフに仕立てた。そのカラフルなアマビエ練り切りをSNSに投稿すると、「かわいい!」と瞬く間に広がった。村井製菓のIT周りを手掛ける姉の力を借りてプレスリリースを発信すると、すぐさま地元新聞社2誌に取り上げられた。

沙邦莉さんは「これは売れる」と確信。姉に相談して楽天市場に出店を決めてオンライン販売をスタートさせる。製造は1人で月に30セットが限界だったが、最大40セットを販売した月もあるほど好評を博した。

「リアルタイムランキングで1位になったんです。想像以上に売れるのでびっくりしました」

アマビエ練り切りの大きな反響は、現場の空気を変えた。「ようできとる」。ベテラン職人の心をも動かし、社内の風向きが変わったことを感じ、沙邦莉さんは少し胸を張った。

セット
祝鯛、ヨゲンノトリ、飾り菊、薔薇、アマビエ、桔梗のセット(4980円・ネット限定販売商品)。現在でも自分へのご褒美のほか、母の日や敬老の日など、健康を願うギフトとして利用する客が多いという(村井製菓提供)

スタバ好きの妹発案“SNS映え”和菓子スイーツ

これを皮切りに、伝統に”カワイイ”要素を加えた和菓子を、女性スタッフの意見も取り入れながら開発していく。

前編の冒頭で紹介した「どらぺちーの」は、もともとはスターバックスコーヒーが好きな妹のアイデアだった。沙邦莉さんは常々ドリンクで何かやりたいと考え、すぐに開発に着手。重視したのは「どれだけSNSに映えるか」という徹底した現代の感性だった。

最終的に、創業当時からの看板商品であるどら焼き「お菊みかさ」を使い、食べ切れるサイズにカットして、とにかく“映える”ようにトッピング。どら焼きにフローズンドリンクをディップして楽しむという、新しい食べ方を打ち出した。

どらぺちーの
「どらぺちーの」のフレーバーは、全部で6種類(「青のどらぺちーの」は期間限定メニューで、現在は提供していない)(村井製菓提供)
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