「お前のやってることは遊びや」とセンスを全否定されたが…SNS映え「カワイイ和菓子」が大ヒット、逆風を乗り越えた3代目の"ブレない信念"

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

さらに、TikTokの流行に乗ってショート動画も取り入れ、姫路城と撮影できるフォトジェニックな和菓子スイーツとして紹介。カラフルでユニークな見た目と、どら焼きとフローズンドリンクという意外な組み合わせが大きな話題になった。

ペストリー
店内のタペストリーなどの販促グッズは、ほとんどが沙邦莉さんがデザインしている。子どもの頃はよくイラストを描いて過ごしていたことが役に立っているとのこと(筆者撮影)

地元雑誌やローカルメディアに次々と紹介され、店には行列ができ、客単価も向上。テレビで取り上げられると和歌山や福井など遠方から足を運ぶ客もいたほどに大きな反響があり、村井製菓の新たな売上柱となり、経営改善に大きく貢献した。

また、宝石のような見た目のカラフルな琥珀糖も開発した。寒天を固めて表面を乾燥させる半生和菓子である琥珀糖は、主にお茶請けとして50代以降の女性に人気がある商品だったが、沙邦莉さんは若い世代にも知ってもらおうと、その”カワイイ”を追求して完成させた。

小さく切って練り切りやどらぺちーののアクセントにするほか、炭酸水やスパークリングワインに入れて楽しむというアレンジは、購入客がSNSで発案してくれたのだという。

「祖父が大切につないできた和菓子が、私の違うアプローチで若い世代にも楽しんでもらえていることが本当にうれしいですね」

琥珀糖
カラフルな琥珀糖。最近顧客から類似品があると報告を受けた。「真似をされるということは影響力を持ったという証拠」と沙邦莉さんはポジティブに捉えている(村井製菓提供)

沙邦莉さんを突き動かす使命感

沙邦莉さんは、和菓子の売り上げが低迷するなかで、男性社会の老舗に飛び込み、古参の職人たちと激しく衝突しながら新しい風を吹き込んできた。あまりの厳しさや理不尽さに「思い描いていた普通の幸せ、結婚や出産は無理かもしれない」と覚悟を決めていた時期もあったという。

それでも沙邦莉さんを突き動かすもの。それは危機に直面した「家族という基盤」を守るという、強い使命感だった。

現在は仕事を通じて出会った夫と結婚し、第1子が誕生した。新たな家族ができた幸せをかみしめる一方で、キャリアと家庭の両立という現実の課題にもまっすぐに向き合っている。

沙邦莉さん
一瞬でまわりをパッと華やいだ空気にする明るいキャラクターの沙邦莉さん。子どもの頃は内向的だったとは思えないほど(筆者撮影)
次ページ父・克行さんに対する娘としてのピュアな願い
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事