「串カツ田中」が9月に買った謎のファミレスの正体 人気店に足を運んでわかった"プチ贅沢"店の衝撃

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今、外食に関して消費者は二極化している。コロナ禍の影響や趣味嗜好の多様化により「外食に強い興味関心を寄せる層」と「外食への関心が薄い層」の消費行動の差が顕著になっている。前者は、多少お金がかかってもいいので単にお腹を満たすだけでなく「外食だからこその体験」を強く求めるようになった。後者は安かろう悪かろうでも「なるべく安く、コスパよく済ませたい」と考えている。

それゆえファミレスでは「中価格帯」の店が岐路に立たされている。具体的には「ジョナサン」や「デニーズ」など。ガストやサイゼリヤの低価格帯、ロイヤルホストなど高価格帯のちょうど中間に位置する。

ジョナサンは、年々、店舗数を減らし、運営会社すかいらーくの別業態への転換が進んでいる。近所のジョナサンが閉店したと思ったら、「むさしの森珈琲」や「しゃぶ葉」、すかいらーくがM&Aをして話題になった「資さんうどん」にリニューアルしていた、なんて経験がある人は多いのではないだろうか。

デニーズでは、近年、有名レストランのコラボメニューに力を入れている。都内のフレンチやイタリアンのシェフ監修を打ち出した期間限定メニューは、セットだと2000円を超えてきてファミレスでは「プチ贅沢」の域に入る。都会にある有名レストランに行くのはおっくうだし高いけど、近所のデニーズで手頃に楽しめるなら……という需要を取り込み、中価格帯の業態でありながらも、一部で高価格帯的な利用を提案している。

ピラソ
10月現在デニーズでは東京・白金台のフレンチ「ルカンケ」とのコラボメニューを期間限定で展開(筆者撮影)

そんな中、ピソラは新たなファミレスとの形として頭角を現している。

「近所で楽しめるプチ贅沢」のポジションを獲得

ピソラは価格で言えば「高価格帯」、さらに「外食だからこその体験」を売りにし、二極化の中で前者、「外食に強い興味関心を寄せる層」を郊外立地でうまく取り込んでいる。

本来、ファミレスは日常の中にあるものだった。それが今、特別な「体験の場」になっている。これまでは”おしゃれで楽しい店“は都会に行かなければ楽しめなかったが、ピソラは郊外にある。わざわざ都会に出かけなくても「近所で楽しめるプチ贅沢」として、近隣に住むお客の心をつかんでいる。考え方としてはデニーズの有名レストランとのコラボメニューと同様だ。

こうしたニーズは今後伸びていくと見て、串カツ田中はピソラに可能性を感じ、傘下に収めたのだろう。

ただし、今回の買収には懸念点もある。後編では、ピソラを買収した串カツ田中の財務上の不安や、次々に出てくる競合店について論じている。

【合わせて読む】:串カツ田中「95億円の賭け」ピソラ買収の成算 創業者が10億円出しても株価急落を招いた"高値掴み"リスク
 
大関 まなみ フードスタジアム編集長/飲食トレンドを発信する人

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おおぜき まなみ / Manami Ozeki

1988年栃木県生まれ。東北大学卒業後、教育系出版社や飲食業界系出版社を経て、2019年3月より飲食業界のトレンドを発信するWEBメディア「フードスタジアム」の編集長に就任。年間約300の飲食店を視察、100人の飲食店オーナーを取材する。
Instagram:@manami_ohzeki

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