ミャンマー難民ロヒンギャを見殺しにするな 日本は難民を積極的に受け入れるべきだ

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日本の立場も苦しいと、中川氏が説明する。「ロヒンギャに直接支援すると、ミャンマー政府から『反乱軍への支援』と見られかねない。その一方で中国は、ミャンマー政府にも少数民族にも支援を行い、存在感を示している」。

中国のミャンマー戦略は巧妙だ。1994年にインド洋に浮かぶ大ココ島にレーダー基地を備える軍港を建設し、2009年にはチャウピュ港から雲南省昆明へと石油・ガスパイプラインを建設するなど軍事・経済ともに関係を深めている。

その一方で中川氏が指摘するように、中国は国境近くのコーカン族の武力蜂起を支援するなど、ミャンマーの微妙な国内事情に入り込んでもいる。

では日本はどうなのか。2012年12月に第2次安倍政権が発足し、最初に麻生太郎副総理兼財務相兼金融相が外遊した先はミャンマーだった。

7~8%の高成長を遂げるこの国の経済のダイナミズムを取り込むこと、そして中国のミャンマー進出を牽制することが目的だ。2014年には国内和解と少数民族の民生向上のため、今後5年間でミャンマーに100億円支援することを表明した。しかしロヒンギャに対する支援は行われていなかった。

ようやく今年6月20日、岸田文雄外相は国際移住機関などを通じてロヒンギャに350万ドルの緊急支援を行うことを表明した。マレーシアなど周辺国に比べて多額であるが、その金額はシリア・イラク難民支援に及ばない。

5000人の申請に対して許可はわずか11人

また難民としての受け入れも、非常に厳しい状態だ。2014年は5000人の申請に対して許可されたのはわずか11人で、110人に人道的配慮として在留を許可したのみだ。国際的に問題視されているロヒンギャについても、イギリスなどの裁判では「真のロヒンギャ」と認定されれば難民認定されるのに対し、日本では強制労働が行われても金を支払えば逃げられる場合は迫害と認定されなかった裁判例もある。

しかし日本はかつて認定難民の他に、延べ1万1000人ものインドシナ難民を受け入れたことがある。その実績を踏まえて、「難民受け入れの枠を広げることは可能だ」というのが中川氏の主張だ。2010年に始まった第三国定住もある。これは、避難国に滞在する難民を移住希望先の国が受け入れるもので、UNHCRが推奨する制度だ。

11月8日に行われるミャンマーの総選挙では、アウンサンスーチー氏が率いる国民民主連盟の躍進が伝えられるものの、ロヒンギャの現状は変わりそうにない。むしろ2010年にはホワイトカード(暫定的な身分証明書)保持者に認められていた参政権がはく奪されたとの報道もあり、悪化している模様だ。

「日本政府がもう少し声をあげてくれたら、我々の活動もやりやすくなるのだが」と難民支援協会の石井氏は溜息をつく。漂流する民族に安住の地が見つかるのは、いつの日だろうか。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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