「警視庁捜査2課のキダといいます」最近急増する"捜査をかたる電話"の正体…まともに答えてみたらどうなる?
そこへ、警視庁捜査2課から電話がかかってきたのです。「そちらに何か被害はなかったでしょうか」と確認するのが目的でした。幸い家族に被害が出る前に詐欺師とわかり、安心しました。
のちに、これは「M資金詐欺」と呼ばれる古典的な手口だと知りました。GHQのマッカーサー元帥の頭文字から名付けられたもので、経営者らを狙い、言葉巧みに金を引き出します。戦後から現在まで、途絶えることのない伝統的詐欺です。
「世の中そう甘い話はない」というのが、家訓として刻まれています。
そんな経験もあり、私は「また詐欺被害なのかな」と思いました。電話の“キダ刑事”はこう続けます。
「このたびですね、岩手県警から協力要請を受けて、ご連絡しています。今、岩手県で起きている事件について、直接事実確認のお話を取りたいということでしたので、捜査本部にある岩手県警に出向いていただけますか?」
岩手県はここ数年、足を踏み入れていませんが、念のため、尋ねました。
「事件の所轄(担当の警察署)はどこでしょうか?」
一瞬、迷うような「間」を置いて“キダ刑事”が答えます。
「本部のほうに行っていただきたいのですが」
「県警本部の捜査2課ということでしょうか?」
「そうです。県警捜査2課から捜査協力要請を受けて連絡をとっています」
なぜ、警視庁が地方の県警に出頭するように電話をかけてくるのか──。この時点で不信感が一気に膨らみました。
突然、圧をかけてくる「キダ刑事」
そうなると、気になるのが“キダ刑事”の狙いです。大事なことを聞くのを忘れていました。
「あ、何の事件でしょうか?」
「何の事件って、岩手の事件と聞いて、心当たりは何もないですかね?」
それまでの丁寧な口調から一転、待っていたと言わんばかりに、突然強気に出てくる“キダ刑事”。あとで「流れ的に所轄ではなく、先にこちらを聞くべきでしたね」と反省しました。