沖縄経済の実力--本土復帰40周年、視線はアジアへ

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新たな沖縄振興策 「一括交付金」が武器

そんな沖縄経済の核となる振興計画に今年、大きな変化が生じた。今年3月30日、「改正沖縄振興特別措置法」(沖振法)と「沖縄県における駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する特別措置法」(跡地法)が成立。「新たな沖縄振興がスタートすることと同じ」と県商工労働部の平良敏昭部長は言う。

4回目の振興計画の後を受けた今回の法律は、これまでとまったく違った意味を持つ。それは、国が立案して国が責任を持って執行してきた振興計画を、今回からは県が策定して県が実行主体となることだ。県の責任は非常に重くなるものの「より地元の特性に合った産業振興がやりやすくなった」(平良部長)。

2020年をメドとする、沖縄産業振興のイメージ図がある。「沖縄型産業の新創造」を中核に、「アジアと日本を結ぶゲートウェイ」、「アジア物流、ITのハブ」、「世界のリゾート拠点」として確立し、自立的経済発展の実現を図ろうというものだ。沖縄の強みを生かせる「ソフト産業」も育成しながら、アジアという舞台に飛び出そうとしている。

基軸となる観光業は4000億円、IT産業は3000億円規模に成長。IT産業は、98年の「沖縄県マルチメディアアイランド構想」や前回の振興計画を基に関連企業の誘致が進んでいる分野で、この10年ですでに250社程度の企業が沖縄に進出している。各種優遇税制を設けたり、沖縄・本土間の情報通信費を支援していることや、また香港と結ぶ巨大通信回線も敷設していることで、「アジアとの情報ハイウェーを目指してやってきた取り組みが評価されている」と沖縄県産業振興公社の勝目和夫専務理事は言う。

企業誘致は、現在はコールセンターが主流だが、「コンテンツ政策やソフトウエア開発など、より付加価値の高いIT企業も増えており、規模・質ともに観光に次ぐリーディング産業になりつつある」と平良部長は自信を見せる。IT業界でも、他県や韓国などと比べても、「事業のしやすさでは、沖縄のインフラが優れているぶん有利」(東京のIT企業関係者)と評価されている。 

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