「腹を斬った状態で、藩主のもとに…」朝ドラ『ばけばけ』小泉セツが尊敬する祖父の壮絶な切腹劇

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

しかし、一度、ならず二度も苦言を呈したにもかかわらず、斉斎に反省はみられなかった。それでも増右衛門は諦めなかった。「三度目の正直」とばかりに決死の覚悟で、藩主の行動を諫めたのである。

ただならぬ様子だった3度目の諫言

この3度目の諫言を行ったときの増右衛門がただならぬ様子だったため、退出後にすぐ斉斎は「呼び戻してくれ」と家来に言いつけた。そこで増右衛門が戻った詰め所を訪ねると、そのときすでに絶命していたという。死体を見れば、腹を切っているではないか。

驚くべきことに、増右衛門は先に密かに切腹し、腹を斬った状態で、藩主に苦言を呈しにいったのだ。歌舞伎にて、登場人物が観客に見えないところで切腹し、その後、迫真の演技をすることを「陰腹(かげばら)を切る」と呼ぶが、まさにそれを実践したことになる。

それだけの思いでぶつからなければ、わかってもらえないと考えたのだろう。その後、藩財政の悪化を受けて、斉斎は隠居させられることとなった。

小泉セツがその波瀾万丈の生涯において、幾度となく苦難を乗り越えられたのは、そんな祖父ゆずりの豪胆さがあったからだろう。

【参考文献】
小泉節子著、小泉八雲記念館監修『思ひ出の記』‎(ハーベスト出版)
小泉凡著『セツと八雲』(朝日新書)
NHK出版編『ドラマ人物伝 小泉八雲とセツ:「怪談」が結んだ運命のふたり』(NHK出版)
櫻庭由紀子著『ラフカディオハーンが愛した妻 小泉セツの生涯』(内外出版社)

真山 知幸 著述家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

まやま ともゆき / Tomoyuki Mayama

1979年、兵庫県生まれ。2002年、同志社大学法学部法律学科卒業。上京後、業界誌出版社の編集長を経て、2020年独立。偉人や歴史、名言などをテーマに執筆活動を行う。『ざんねんな偉人伝』シリーズ、『偉人名言迷言事典』など著作40冊以上。名古屋外国語大学現代国際学特殊講義(現・グローバルキャリア講義)、宮崎大学公開講座などでの講師活動やメディア出演も行う。最新刊は『大器晩成列伝 遅咲きの人生には共通点があった!』( ディスカヴァー・トゥエンティワン ) 、『ひょんな偉人ランキング ―たまげた日本史』(さくら舎)。「東洋経済オンラインアワード」で、2021年にニューウェーブ賞、2024年にロングランヒット賞受賞。
X: https://twitter.com/mayama3
公式ブログ: https://note.com/mayama3/

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事