《それゆけ!カナモリさん》ネスレのコーヒーマシン「バリスタ」の壮大な計画

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 しかも、バリスタの機械本体は7980円と非常に安い。マシンの質感もデザインも1万円~3万円が中心価格帯の他メーカーのマシンと比べて遜色なく、これが「ペネトレーションプライシング」であることは一目瞭然である。利益率を低く押さえ、シェアを一気に奪取する価格設定だ。結果、2009年の発売以来、2012年2月までに80万台を売り上げるヒット商品となった。実際、楽天市場などでコーヒーマシンの売れ筋ランキングなどを見ると、今や上位10位の過半をバリスタとその派生製品が占めている。

では、なぜこの価格設定が成立したのか。既にピン!と来ている方も多いだろう。ネスレが売りたいのはバリスタではなく、エコ&システムパックなのだ。

バリスタとエコ&システムの関係は、プリンタとインクカートリッジに置き換えて考えるとわかりやすい。プリンタはその精密な機能にもかかわらず、実売価格は極めて安いといえるだろう。それは、利益は専用インクカートリッジで取るからだ。顧客に使い続けさせることで、利益をだす。これを「アフターマーケティング」という。ネスレの狙いもそこにある。

■ロスリーダーから市場拡大の牽引車への華麗な反撃

 バリスタの投入前、ネスレは競合AGFに押されていた。先にも述べた個食化などの結果として、小分けのスティックタイプの商品にシェアを奪われていたのである。流通チャネルでも多数のフェイスを確保し、流通業界筋の情報では売上ではネスレを軽く上回るという。それにつれ、ガラス瓶タイプのインスタントコーヒーの値崩れは顕著となり、客寄せのための商品、ロスリーダーに設定されることもしばしば。ネスレにとってはうれしくない事態であったことは疑いようもない。

加えて、“外飲みコーヒー”の定着に従い、コーヒーの多様な楽しみ方は“家飲みコーヒー”にも波及し、「粉末とお湯とミルクを入れて混ぜる」という単純なものから、マシンを使う本格的なもの、同じインスタントでも様々なフレーバーを楽しめるものなど、業界では「コーヒー戦争」とも言われる状況も起きていた。

 

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