一方の聖子さんは、年齢も見た目も家柄も職業も「大いに気になるタイプだ」と告白する。古風な家庭で育てられた聖子さんは骨の髄まで日本人で、だからこそ、同族嫌悪的に日本社会に馴染めなかったのかもしれない。
「でも、ヨハネスに関しては、そういうことがまったく気になりません。“魂レベルで合う”というのでしょうか。結婚したとき、彼は無職で実家にいましたが、『この人と一緒にいれば私は大丈夫』という根拠のない安心感がありました」
喧嘩もする、ADHDの夫と“幸せな”ふたり暮らし
実際、ヨハネスさんは結婚後に公的機関への就職を果たす。ADHD(注意欠如・多動症)を自覚している彼の特性を生かせる仕事で、女性が9割というオランダでも特殊な職場環境にもまったく違和感なく溶け込んでいるらしい。「僕は女子っぽいのかも」と、ヨハネスさんは日本語で冗談を言う。2人の家でも、「公用語」は日本語だと聖子さんが教えてくれた。
「私は英語ができませんし、オランダ語も流暢とは言えません。日本語で会話できない時間が続くと鬱っぽくなるので、家では日本語を使うことを死守しています(笑)」
夫婦喧嘩をすることもある。家事はほぼ半分ずつ分担しているが、ヨハネスさんは片付けがまったくできない。これに、聖子さんは一方的に腹を立てているようだ。
「服をたためない、食器を戻せない、料理の手順をいちいち聞いてくる、などです。ADHDの特徴だとは知っていますが、私が安息できません!」
ヨハネスさんは叱られるたびに謝り、逆ギレしたりはしない。ただし、細かいことが異様に気になる傾向があると聖子さんは指摘する。
「例えば、私の鼻毛とかです(笑)。『また鼻毛、出てる!』とすごく怒るんです。パニックになると言ってもいいぐらいです」
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