もうひとつ、ミスタードーナツの競争優位性につながっているのが、顧客の声を大切にする姿勢だ。リアルな不満や要求を聞くために、4つのチャネルを作っている。
1つ目は、店で年に2~3回レシートにQRをつけて配布する「お客様アンケート」だ。客が回答すれば特典がもらえる形になっており、これを通じて店舗ごとに「不満がないか」「あるとすればどんなことか」をチェック。本部でデータを集積し、各地域のエリアマネージャーを通じて対象加盟店に情報共有、改善につなげている。
2つ目は、公式サイトに設けた「お問い合わせ窓口」、3つ目は、XなどSNSの書き込みだ。
そして、4つめとして年6回、ミスタードーナツ事業を統括するダスキン最高執行責任者(COO)の和田哲也氏が、全国都道府県を回ってファンミーティングを実施している。

これらのチャネルから聞こえてくる代表的な不満は、「近くにショップがない」「欲しい商品がショップにない」「購入時に待たされる」の3つ。ミスタードーナツはこれらに1つ1つ、真摯に対応している。
聞こえてくる「不満」にヒントがある
たとえば、「近くにショップがない」という声は、出店計画にダイレクトに生かされている。
もちろん、最寄り駅の乗降客数や、商圏が重なる店舗の有無も検討しなければならないので、100%対応は難しい部分もある。デベロッパーの問題や、地域のFC加盟店が運営するか・しないかという判断も必要になる。いうまでもないが、売り上げ予測をして、投資回収ができる見込みである立地であることは大前提だ。
「それらの事情を鑑みたうえで、希望されるお客様のいらっしゃる地域や生活圏内への出店を考えています。たとえそのエリアに出店できなくても、そこからより近いところで新しい物件が出てくれば、出店を検討します」

他方、「欲しい商品がショップにない」「購入時に待たされる」という不満については、2021年に導入した「ミスドネットオーダー」を解決の糸口のひとつに結びつけている。
事前に欲しい商品を注文して店舗で受け取れるので、待たなくていい。2024年からは、アプリからネットオーダーを利用できるシステムも加わった。
ミスタードーナツの魅力には、ショーケース前で「どれにしよう」と迷ったり、並んでいるときに前の人を真似したりと、「選んだり、並んだりする体験の楽しさ」も含まれている。その良さを守りつつ、急ぐ客や目的の商品だけを購入する客の不満解決をした形だ。
また、アプリは以前、「来店ポイントが付くミスタードーナツカード」代わりのシンプルな形態だったところからリニューアルしたもの。「来店スタンプを3つ集めるとドーナツ1個引き換えクーポンプレゼント」など、ファンにうれしい特典が用意されている。会員数は、2025年7月時点で460万人と盛況だ。
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