
新作ドーナツは次々と誕生するが、ライセンス取得時の基礎知識があれば、マニュアルを共有して再現できる。エリアによっては、新商品の事前勉強会なども開催しているそうだ。
「仕組み化」しない姿勢は店舗づくりにも現れている。
店のサイズやレイアウトも、ある程度の基準はあるがフォーマット化せず、物件により大きく異なる。ショーケースのサイズも店によってまちまちだ。一番長いのは北海道の「コーチャンフォーミュンヘン大橋ショップ」の約10mなのだとか。

滞在時間の制限も「店舗におまかせ」
近年、ミスタードーナツを含めカフェ形態のチェーンでは、勉強や仕事をする人が長時間滞在する「サードプレイス化」が進んでいる。時間制限を設けるなどの対処をするチェーンもあるが、そこに特化した戦略も本部では特にたてていない。地域によって環境が異なるため、各店に判断を任せている。

ミスタードーナツの経営について聞けば聞くほど、大資本では見過ごされがちな「ケースバイケース」の重要性が浮かび上がってくる。現代の外食企業は、細部まで仕組み化している店が少なくない。わかりやすく、FC加盟店にとっては運営しやすい面もあると思うが、その仕組みが外部にばれてしまうと、真似されるリスクもはらんでいる。
個々の裁量を認め、課題があれば「みんなで共に悩んで決める」という企業文化は、人間味があり、データドリブン時代において、競合他社が採用しにくい戦略だ。
効率化を求める株主や投資家に「なぜ統一しないのか」「ROI(投資収益率)はどうなのか」と問われれば、説明が困難だからだ。だからこそ、市場シェア9割という競争優位性につながっているのだろう。
キャッシュを集めるためだけにFC加盟店を増やし、「稼いだらそれで終わり」と無責任に倒産する企業もあるなかで、ミスタードーナツは55年もの間、人間味のある経営姿勢を保ち続けている。
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