「もう100円セールはやらない!」 フードグループ15億円赤字で大ピンチ、ミスタードーナツが復活を果たした"きっかけ"とは?

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ミスタードーナツでは年に3~4回、他ブランドとのコラボ商品をつくっている。春は抹茶、夏と年末年始はキャラクター、冬はショコラなど、シーズンによってジャンルが決まっている。

発売期間は約2カ月間で、登場するアイテムは4~8個。第1弾、第2弾と、1カ月ずつずらして発売する場合も。

販売個数の内訳を見ると定番商品が6割、コラボ商品が4割ぐらいになり、コラボ商品の人気がうかがえる。

コラボドーナツ
(左)2024年冬、ポケモンとコラボした「ピカチュウ ドーナツ」。見た目のかわいさもさることながら、カラメルカスタード風味のチョココーティングのおいしさも評判だった。(右)2025年のバレンタインシーズン、ピエール マルコリーニとコラボした「ショコラ ノワール」。ビターなガナッシュクリーム風味としっとりチョコレート生地の相性が抜群だった(写真:ダスキン提供)

なぜそんなにもコラボ商品は売れるのか。

「人気の理由のひとつは、『監修』ではなく『共同開発』であることではないでしょうか」と巖さんは分析する。共同開発とは、文字通り一緒に作り上げるということ。手順はこうだ。

まず、企画ごとに商品開発室から専任担当者が決定。コラボ先企業から「特徴や大切にしていること、こだわり」をヒアリングするところからはじめる。担当者はこの内容を生かして、新ドーナツ専用の生地やトッピングなどの開発に着手する。

次に、コラボ先企業に、試作品の味と見た目、食感を確認。「フィードバックを反映し、良いところを磨いていく」作業を繰り返す。さらに最終、社内外で広く試食調査を実施、その意見を反映して完成に至る。

構想から発売までの期間は短くても1年、長くて3年と、かなりの時間がかけられている。

ドーナツを「覆い隠す」逆転の発想

コラボ商品の開発においてルールはなく、自由度が高い。2017年からはじまった祇園辻利とのコラボでは、ドーナツを「パッケージで覆い隠す」大胆な施策を取った。

ミスタードーナツといえば、ガラスのショーケースに美しく並んだドーナツの「顔を見て買ってもらう」のが伝統である。色とりどりのグレーズ(糖蜜)、チョコレートのツヤ、ポン・デ・リングの愛らしい形──それらが視覚に訴える販売手法はミスタードーナツの強みのひとつだ。

その常識を180度転換したのだ。

「ドーナツを覆い隠す」パッケージ
2024年の祇園辻利とのコラボで使われた「ドーナツを覆い隠す」パッケージ(写真:ダスキン提供)

理由は、ショーケースの明るい照明下では宇治抹茶の風味が劣化し、色もあせてしまう可能性があるからだ。抹茶の風味と色を重視する祇園辻利の姿勢が、ミスタードーナツの創業からの伝統を変えた。

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