高市氏 vs. 小泉氏で一騎打ちムードの自民党総裁選に"割って入る"と永田町で噂される「第3の男」の正体

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その高市氏とトップを争う小泉氏は、前回の総裁選出馬会見ではまず「子どもを持ち、親になって変化した自分」をアピールし、選択的夫婦別姓や「年収の壁」の撤廃、労働規制の見直し(解雇規制の撤廃)など「人生の選択肢の拡大」を訴えた。目玉とする選択的夫婦別姓については、1年以内に実現すると宣言。「できるだけ早く衆議院を解散して、中長期的政策についても国民の信を問う」とも述べた。

しかし、今回は選択的夫婦別姓や解雇規制撤廃を封印した。これらは前回の総裁選で党内から批判が出たうえ、党員票が61票と振るわなかった原因とみられたからだ。代わりに小泉氏が強調したのは「党の再生」だ。

自民党は2009年の衆院選で下野したが、谷垣禎一総裁(当時)の下で党が一丸となって再生に励み、東日本大震災でも被災者支援と復興に取り組んだ。このときに初当選した小泉氏も、その一員として奮闘。また、福島復興をライフワークとし、月に1度は通い続けた経験も述べた。

その構想は以前からできあがっていたのだろう。小泉氏は17日、記者団に対して「谷垣氏は自分の主張を抑えてでも、党の一体感を作るために汗をかいた。あの姿を見たことが、今の私の決断につながっている」と述べ、自民党が下野した時代と現在の危機を重ね合わせてみせた。19日には谷垣氏を訪問し、40分間懇談している。

小泉氏にちらつく旧派閥の大きな影響

さらに出馬会見ではガソリン税暫定税率廃止など物価高対策に加え、インフレ対応型の経済運営を主張。2030年度までに国内投資135兆円・平均賃金100万円増を目指すとした。

これは故・池田勇人元首相の「所得倍増計画」や岸田文雄前首相の「資産倍増」につながるもので、宏池会(旧・岸田派)の影響は明らかだった。というのも、今回の小泉選対を仕切るのは岸田前首相の側近である木原誠二氏で、元財務官僚の木原氏には財務省の影もちらついている。

木原誠二
小泉陣営の選対委員長を務める木原誠二氏(写真:ブルームバーグ)

靖国神社参拝については、小泉氏も高市氏と同様に明言しなかった。昨年は「毎年8月15日に行っている」と積極的に述べたが、今回は「適切に判断する」にとどめた。いずれも、保守カラーを強めてはかえって支持が離れるとみたのだろう。

その理由として「党員票の変化」を挙げることができる。今回の総裁選での選挙人の数は91万5574人で、2024年の総裁選での105万5839人から14万0265人も減少した。これらの多くは保守層で、今年の参院選では参政党などに支持を移したと推定できる。そして、彼らは今回の総裁選では投票権を有していない。

その傾向はこれからも続くだろう。すなわち「右系が自民党を決する」という時代は終わりつつあるのだ。“再生”自民党の総裁のイスにはいったい誰が座るのか。初の女性総裁か、史上最年少の総裁か、それとも――。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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