「消費減税」が陰に隠れた自民党総裁選…「積極財政」vs「財政健全化」が対立軸になりえない日本の現実とは?いま振り返るべき安倍財政の実像

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コロナ禍で、2020年度から2024年度にかけて、10兆円をはるかに超える補正予算を組んだが、年を追うごとに「実弾」がなくなっている。

公共事業を大幅に増額しようにも、それを受注できる建設業者には限りがあって、金額を積んでも消化しきれない。人口が減少する農村部には、巨大インフラの新規整備プロジェクトを打ち上げても、魅力的ではなくなっている。半導体など新たな戦略分野への投資を後押しする財政支出といえども、数年間にわたって少しずつ投じれば済む話だから、単年度に一挙に兆円単位の財政支出を投じる必要はない。

だから、お題目としては「積極投資」だが、予算計上してもすぐには使わず「基金」としてお金を貯めて置いてあるだけに成り下がる。

巨額の補正予算と勇ましく言ったところで、真に効果的な「実弾」がなくなってきており、「空積み(中身のない予算計上)」が多くなっている。その証拠に、巨額の補正予算が計上された翌年度には、兆円単位で巨額の不用額(結局予算が執行されず使わないことが確定した歳出)が立つというありさまである。

積極財政は「アンチ・エリート」のポーズなのか

結局、コロナ禍を経た後の積極財政というのは、反エスタブリッシュメントの言動に成り下がっているのだろうか。つまり、財務省や日銀といったエスタブリッシュメント(社会を支配する体制)の主張に反対する姿勢を見せるだけの空虚なものなのだろうか。

「ケチ」な財務省が歳出増額や減税を渋っていて、それを屈服させて溜飲を下げる。財政出動のための国債増発には金利が低いほうが都合がよいから、金融政策の正常化を目指して利上げを志向する日銀に対して、それを屈服させて溜飲を下げる。それだけのことなのか。

消費税減税は、その最たるものである。

消費税減税には、財界を含めたエスタブリッシュメント側は反対している。反エスタブリッシュメント側からみると、エスタブリッシュメント側が好む政策は「庶民を虐げる」ものにみえるかもしれない。

しかし、エスタブリッシュメント側からみれば、消費税の維持をはじめ支持する政策は国民全体のためになると確信している。もちろん、エスタブリッシュメント側であっても、現行制度に改革すべき点が多々あると認識している。

反エスタブリッシュメントのスタンスは、野党だったらありえるだろう。

しかし、自民党はエスタブリッシュメント側の政党である。一個人の政治家が財務省や日銀とどこまで近い主張を持っているかは別として、普通に国政を見れば、自民党が反エスタブリッシュメントだとは思わない。

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