「サプライズ発表」だった日銀ETF売却で市場が同様、「慎重なコミュニケーション」を求める声も

日本銀行による上場投資信託(ETF)の売却決定を受け、19日の東京株式市場では、日経平均株価(225種)が乱高下する展開となった。最高値圏で推移している株価への影響は限定的とみられるが、突然の発表による市場の動揺で、日銀の対話不足を指摘する声もある。(経済部 杉本要、岡本朋樹)
「寝耳に水で、サプライズ発表という言葉に尽きる」。みずほ証券の小林俊介氏は、日銀の決定を驚きをもって受け止めた。
日経平均は19日午前、取引時間中の最高値を更新したが、日銀の決定を受けて一時、前日終値より800円以上値下がりした。1日の変動幅は1300円を超えた。市場では、これまでの過熱感からパニック売りを呼び、「機械的に売られた」(大手証券)という。
ただ、ETFの売却額が小規模だとの安心感から下げ幅は縮小し、終値は257円62銭安の4万5045円81銭だった。東証プライムの売買代金は前日の1・8倍の8兆7515億円と、2022年4月に東証が市場区分を変更して以降、1日当たりで最大となった。
年間3300億円程度の売却額は、日銀が金融機関から買い取った株式を市場の混乱なく16年から売却した事例を参考にした。植田和男総裁は記者会見で「市場へのかく乱的な影響を極力回避するよう少しずつ処分を進めることが適切だ」と市場への配慮をみせた。
日銀がETF売却などを決めたのは、株価が高値で推移する中、金融政策の正常化を進めるためだ。
日銀はリーマン・ショック後の10年、株価を下支えするためETFの購入を始めた。13年に黒田東彦氏が総裁に就くと断続的に購入額を拡大。大和総研の中村文香氏は「相場が悪化しても日銀が支えてくれるとの思惑で、海外投資家が日本株を買う安心感につながった」と指摘する。
しかし、購入拡大で日銀が間接的に企業の株主となり、企業統治をゆがめるとの批判は以前から強かった。日銀が保有するETFは簿価で約37兆円まで積み上がり、東証プライムの時価総額の7~8%を占める。
日銀は24年3月にマイナス金利を解除した際、ETFの新規買い入れ終了を決めており、市場では、売却開始は既定路線として株価への影響は限定的とみる向きが強い。ただ今回の株価の乱高下に、大和総研の中村氏は「もう少し慎重に(市場との)コミュニケーションがあっても良かった」と指摘した。
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