風邪が「がん再発」の引き金になる?最新研究で判明:ウイルス感染が眠っているがん細胞を目覚めさせる"新事実"《医師が解説》
研究チームは乳がんや皮膚がんのモデルマウスに、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスを感染させました。すると、骨や肺に潜んでいた休眠がん細胞が再び活動を始め、転移が進むことが確認されたのです。
なぜ感染によって休眠がん細胞が目覚めるのか。それは炎症性サイトカイン(細胞が出す炎症を促進するタンパク質)の放出が原因です。
体内にウイルスなどの病原体が入り込むと、免疫細胞などが炎症反応を起こして、排除しようとします。このとき大量に分泌される IL(インターロイキン)-6 などの炎症性サイトカインは、免疫細胞だけでなく、がん細胞にも直接作用。それにより、休眠しているがん細胞が「増殖モード」に切り替わってしまうのです。
インフルエンザや新型コロナのような呼吸器に感染するウイルスは、その症状が強いことから推察されるように、肺や全身に強い炎症を引き起こします。その結果、骨や肺に潜んでいた休眠がん細胞が「目覚める」リスクを高めてしまうと考えられるのです。
人間でも確認されていたリスク
新型コロナのパンデミックは、多くの人に不幸をもたらしました。
一方で、パンデミックの数年間にウイルス感染に関する研究データが多く集積され、肺へのウイルス感染ががんの進行に及ぼす影響について、その一部が解明されることにもつながりました。
イギリスで50万以上の健康データを集めているUKバイオバンクのデータを解析すると、がん経験者が新型コロナに感染した場合、感染していない人と比較して死亡リスクは2.56倍、がん関連死亡リスクは1.85倍と上昇していることがわかりました。
また、死亡リスクの上昇は新型コロナに罹患したあと数カ月間が最も高く、そこからは経時的にリスクが低下していました。
この事実から、マウスで示されたような「新型コロナ感染が休眠がん細胞を起こして増殖させる現象」が、人間でも起きている可能性が示唆されたわけです。
■再発を予防する方法
新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスにはワクチンがありますが、その性能には限界があります。
実際、現行のワクチンは、感染と発症を防ぐ効果は高くありません。それはウイルスが変異するため、変異に合わせたワクチンをタイミングよく作るのが難しいからです。
インフルエンザワクチンは子どもでは発症予防効果がありますが、がん年齢とされる中高年では「重症化を防ぐ」ことが主な目的です。したがって、ワクチンだけでは感染・発症予防は不十分であり、日常の行動がカギになります。
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