風邪が「がん再発」の引き金になる?最新研究で判明:ウイルス感染が眠っているがん細胞を目覚めさせる"新事実"《医師が解説》

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マスクと手洗いは、呼吸器へのウイルス感染を防ぐうえで効果的です。

マスクの着用は、大規模研究により新型コロナやインフルエンザの感染リスクを20〜30%減らすことがわかっています。また、手洗いを1日5回以上している人は、していない人に比べて風邪やインフルエンザの発症率が半分以下になることがわかっています。

生活習慣の改善も重要です。

睡眠は毎日7時間前後を確保。6時間未満では、我々に生まれつき備わっている自然免疫で重要な役割を担うナチュラルキラー(NK)細胞の活性が30%以上低下するという研究結果があります。

食事では野菜・果物を1日350グラム以上、魚は週2回以上食べるようにします。反対に、ソーセージやベーコンなどの加工肉は、週50グラム未満に抑えましょう。

運動は週150分の速歩き(中強度運動)で、感染リスクが30%低下するという報告があります。飲酒は、1日に飲むエタノールの量がビール中瓶1本分を超えると免疫機能が低下し、がん再発リスクが上がるとされています。可能なら禁酒しましょう。

喫煙は“百害あって一利無し”です。喫煙者では肺炎リスクが2倍、がん再発リスクも明確に上昇しますので、禁煙が必須です。

“風邪予防=がん再発予防“

これまでも、がんのなかには、治療後も「休眠がん細胞」が体内に潜み、再発の原因になりうるタイプがあることが知られていました。そして今回の研究では、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスががん細胞を増殖させる引き金を引いている可能性が示唆されました。

新型コロナウイルス感染では、実際にがん患者が新型コロナ罹患後にがん死亡リスクが上がっていることも明らかになり、風邪は万病の元どころか、「風邪をひいたらがんが悪化する」ことが科学的に裏付けられつつあります。

眠っているがん細胞を目覚めさせるIL-6は、さまざまなウイルス感染でも分泌されるため、すべてのウイルス感染症ががん再発のリスクとなる可能性があります。

今は暑い時期でも感染症が増えている時代。がん経験者にとっては“風邪予防=再発予防“です。マスク、手洗い、睡眠、食事、運動、禁酒、禁煙といった予防法を徹底することが、最も確実な自己防衛策になるでしょう。

久住 英二 立川パークスクリニック院長

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くすみ えいじ / Eiji Kusumi

1999年新潟大学医学部卒業。内科専門医、血液専門医であり、旅行医学やワクチンに関する造詣が深い。国家公務員共済組合連合会虎の門病院で内科研修ののち、臍帯血移植など血液がんの治療に従事。血液内科医としての経験から感染症やワクチンにも詳しく、常に最新情報を集め、海外での感染症にも詳しい。2024年12月に立川高島屋SC10階に内科、小児科、皮膚科の複合クリニック「立川パークスクリニック」を開業した。

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