「論破は三流のやること」Z世代を巧みに動かす一流の上司が、言葉を使わない決定的な理由
論破は相手を打ち負かす行為だ。勝った側は優越感に浸るが、負けた側には屈辱感が残る。この繰り返しで、上司と部下の信頼関係は完全に壊れてしまう。
論破が目的になると、議論の本質を見失う。相手の言葉尻を捕らえることに終始し、本当に解決すべき課題から目がそれてしまうのだ。
論破合戦が始まると、職場に「ギスギスした空気」が漂い始める。誰もが「次は自分が標的になるかも」と身構えるようになる。会議では本音を言えず、建前ばかりが飛び交うようになるだろう。
論破にこだわるのは三流だ。繰り返すが、とても論理的とは言えない。一流の人間は、もっと俯瞰力がある。大局的に物事を考えるから、相手を言い負かすことではなく、相手と関係を築き、動かすことに注力するのだ。
言葉ではなく「空気」で動かす方法
では、論破したがるZ世代をどう扱えばいいのか。答えは「言葉で戦わない」ことだ。
冒頭の部長がまさにそうだった。彼は論破された課長を制し、何事もなかったかのように会議を進めた。そしてその後、課長と新人が「論破合戦」の関係になっていると聞いて、その新入社員を個別に呼び出した。しかし、会議での態度を咎めることは一切しなかった。
「君の分析は素晴らしいよ。その分析力をぜひ組織に活かしてくれないか」
代わりに、翌週から新入社員を重要プロジェクトのメンバーに加えた。ただし、一つの条件をつけた。「君の役割は、正しい分析をすることだけじゃない。その分析結果を基に、他部署のベテラン社員たちを説得し、動かすことだ」と。
すると新入社員は、次第に「論破」ではなく「協調」の重要性に気づき始めた。理屈だけではメンバーを動かすことができない、と身をもって理解できたからだ。彼はここで初めて、人を動かすのは正論だけではないと学んだのだ。
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